被爆地から、市民社会の「真の声」を世界に
被爆78年原水爆禁止2303年世界大会に参加して


日本宗教者平和協議会 代表理事 日本基督教団隠退教師 船 水 牧 夫



国際会議

 原水爆禁止2023年世界大会は、「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を人類と地球の未来のために」というテーマの下に、8月4日から5日までの日程で開催されました。
 4日、5日、両日にわたって広島JAビルで開かれた国際会議には日本宗教者平和協議会から森修覚事務局長、船水牧夫が参加しました。国際会議には国内外の反核平和運動のリーダーが一堂に会し「核兵器のない世界」に向けて、核兵器の非人道性と被爆の実相を伝える取り組み、核使用の危険が高まる中で核兵器国と「核の傘」の国で運動をどう進めるのか、市民社会の連帯と行動について活発に論じられました。大会には16カ国、地域から43人の海外代表、21団体、3NGOが参加しました。

開会総会

 主催者を代表して野口邦和運営委員会共同代表より、「世界大会が核兵器禁止・廃絶の流れを促進し、朝鮮半島の非核化・平和団体の構築を実らせ、日本政府に核兵器禁止条約への参加と憲法を活かした平和外交を迫ろう」という「平和の波」行動の開始宣言がなされました。続いて、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の濱住治郎事務局次長は「ロシアのウクライナ侵略は核の威嚇で始まり、ベラルーシへの戦術核配備も開始され、核使用の危惧がいっそう高まっている。核兵器も戦争もない青い空を世界の子どもたちに届けることが被爆者の使命であり、全世界の大人一人一人の使命である。共に力を尽くしましょう」と呼びかけました。

第一セッション
テーマ「被爆者の声を世界に」

 広島の被爆者の児玉三智子さんは恐ろしい被爆体験とその後の生活苦、偏見と差別を語り、二度と自分たちが味わった地獄の苦しみを味合わせてはならない、そのために「核抑止力による安全保障ではなく、相互信頼に基づく安全保障政策に転換し、核兵器廃絶を」と訴えました。長崎の被爆者横山照子さんも自らの被爆体験を語り、「地上に想像を絶する地獄をもたらす核兵器は、どんなことがあっても使ってはならない。そのためには核兵器廃絶しかない」と訴えました。
田村和之広島大学名誉教授は、原爆「黒い雨」訴訟広島高裁判決の意義について特別報告をしました。その意義として黒い雨に遭った者は被爆者である 「黒い雨」被爆の範囲はこれまでより広く解釈、適用すべきである 黒い雨による内部被曝者を援護すべきである 原爆だけでなく公害についても日本政府は被害を矮小化したり、救済範囲を狭めようとしたりしてはならない、この4点を挙げました。
 イ・ギヨル韓国原爆被害者協会監査役、シム・ジンテ原爆被害者協会ハプチョン支部支部長、両名のビデオでの発言があり、現在、韓国人被爆者に対する原爆投下の責任を米国に問う国際民衆法廷の取り組みをしているとの報告がありました。
マーシャル諸島の核実験被害者としてロンゲラップ島民代表、マーシャル共和国元上院議員のアバッカ・アンジャイン・マディソンさんは、核実験被害者の被害の実相と核兵器の禁止、廃絶を実行するよう訴えました。
 質疑応答では、静岡の被爆2世の女性が、「核がいつ使われるか分からない現状に黙ってていいのか」と訴えていると語りました。

第二セッション 
テーマ「核兵器の禁止、
核兵器のない世界の実現」

米国の平和・軍縮・共通の安全保障キャンペーンのジョセフ・ガーソン議長は、「ヒバクシャの強烈な被爆証言は核抑止力に依拠した誤った『安全保障』論を打ち破る力を与えてくれる」と述べ、第二回締約国会議に合わせたニューヨークでの国際共同行動で「核兵器廃絶の光を輝かせよう」と呼びかけました。又、各国代表からは、米国中心の軍事同盟に抗する草の根の実践が報告されました。
 ロシアのオレグ・ボドロフさん(フィンランド湾南岸公共評議会、物理学者、環境保護活動家、国際平和ビューロー運営委員)は、「ロシアのウクライナ侵攻の際、ロシア軍はザポリージャ原発を占拠し、原発は核兵器と同じ恐ろしい破壊兵器となりうることを明らかにした。今、ロシアでウクライナ侵攻への抗議行動を行うということは、非常に困難で危険ではあるが、平和を求めて世界中の人々が団結し、行動しなければならない」と訴えました。
 日本原水協の安井正和事務局長は、「今年5月に広島で開催されたG7サミットで採択された宣言『広島ビジョン』は、核兵器の廃絶を永遠のかなたに先送りし、『核兵器は防衛目的の役割を果たす』と居直り、核兵器の使用を前提とする『核抑止力』論を公然と、被爆地広島で宣言されたことに厳しく批判し、核抑止力論を打ち破り、『核兵器のない平和で公正な世界』へ進むため国連、諸国政府と市民社会の共同を大きく発展させよう」と訴えました。さらに、「600の地方議会が禁止条約参加を求める意見書を決議したと紹介し、130万人となった条約署名、批准を求める署名を軸に、国民との対話を広げ、日本政府に禁止条約への参加を迫り、ニューヨークでの国際共同行動の成功に向けて全力を尽くそう」と訴えました。

第三セッション 
テーマ「核兵器のない平和で公正な世界 ―市民社会の連帯と行動」

 北大西洋条約機構(NATO)に加盟したばかりのフィンランドの「平和を求める女性の会」のウーラ・クロッツアーさんは、「NATOが拡大を続ける限り、核共有している国々が禁止条約に調印することはない」と述べ、3月に結成した「反NATOで団結する平和を求める世界女性の会」が約40か国に広がっていると紹介しました。又、核保有国や同盟国の代表は核兵器使用の危険を前に「今こそ行動する時だ」と訴えました。
 米国のニューヨーク州ピースアクションのマーガレット・エンゲルさんは「核の時代に終止符を打ち、より安全で、持続可能で公正な未来を築くために、国際的な共同を発展させよう」と発言しました。
 ドイツの国際平和ビューロー・平和を目指す科学者の会・米軍基地閉鎖ラムスタイン運動のライナー・ブラウンさんは「今の時代は戦後最も危険な時代であって、今求められていることは核兵器、戦争、破壊に反対する平和運動の新しい国際主義である。ウクライナ戦争の停戦と交渉を求め、核兵器と戦争のない世界の実現を目指そう」と発言しました。
 国際平和ビューロー(IPB)事務局長ショーン・コナーさんは(写真)「今、最も重要なことは反核団体と連帯して、ヒバクシャの声を大きく広げて、核兵器廃絶のために尽くすことである」と語りました。
 イギリスの核軍縮キャンペーン(CND)のケイト・ハドソンさんは「私たちはこれまで以上に、より広い安全保障概念を採用し、気候変動と核戦争という人類の生存を脅かす二つの脅威に対抗しなければならない。そのために国際法の順守、人権と万人の尊厳の尊重、そして人々のニーズを満たす安全保障、この目標に向かって共に闘おう」と訴えました。

国際会議宣言

 最後に、「核兵器はいかなる状況においても決して使用されてはならず、そのすべてを一刻も早く完全に廃絶すべきである。秋の第78回国連総会、11月の核兵器禁止条約第2回締約国会議、核不拡散条約(NPT)再検討プロセスなどを節目に、各国政府と市民社会の運動を大きく結集し、国際的共同をさらに発展させ、核兵器禁止条約参加を迫る運動を強化しよう」との国際会議宣言を採択して閉幕しました。

ヒロシマデー集会

 6日午後、広島県立総合体育館・グリーンアリーナにおいて1500人(主催者発表)が参加し、全国で視聴する中で、ヒロシマデー集会が行われました。日本宗教者平和協議会から、森修覚事務局長、林正道常任理事、船水牧夫代表理事、広島の宗平協会員数名が参加しました。
 主催者報告で、冨田宏治国際会議宣言起草委員長より、「核兵器使用の現実の危険が高まる中、核兵器は決して使われてはならない。一刻も早く完全廃絶すべきだというのが今大会の最大のメッセージだ」との報告がありました。
 ゲストスピーカーとして、広島で13歳の時に被爆したサーロー節子さん(カナダ在住)と、14歳で被爆した矢野美耶古さんが被爆体験を切々と語り、二人とも今年五月に開かれたG7(主要7カ国)首脳会議が核抑止論を宣言したことに強い憤りを覚えたと語りました。車椅子で登壇されたサーロー節子さんは、私たちに訴えました。「広島で行われたG7サミットにおいて『核抑止力』は防衛のために有効であるとの立場をG7の首脳によって、この広島の地で公然と宣言されたことは被爆して亡くなった方々と、生き抜いて来た被爆者に対する冒とくです。日本は唯一の戦争被爆国でありながら、核兵器禁止条約に署名も批准もしていません。核兵器のない、安全で公平な社会を、力を合わせて作ってほしいと望んでいます。」参加者はこれに大きな拍手で応えました。
 共同呼びかけ人でライターの和田静香さんは、1954年のビキニ事件を契機に杉並区の女性たちが起こした原水爆禁止運動を紹介し、「声を挙げた女性たちのバトンを受け継いでいきましょう」、と訴えました
 集会では21年に発効した核兵器禁止条約の重要性を指摘する発言が相次ぎました。(同条約は核兵器の保有、使用、使用の威嚇など、初めて全面的に違法化した国際法です。現在、国連加盟国(193)の半数近い92カ国が署名し、68カ国が批准しております。(1127日から12月1日にはニューヨークの国連本部で第二回締約国会議が開催されます。)
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のダニエル・ホグスタ暫定事務局長は、同条約が「人類の到達した素晴らしい成果だ」とし、「被爆者と日本国民がその条約実現の推進力となった」と述べ、日本政府がその先頭に立つよう求めました。
 政党からは日本共産党の志位和夫委員長の連帯挨拶がありました。志位委員長は核兵器廃絶に向け、日本政府に3つの要求を述べました。第一に「核抑止力」の見直し、核廃絶の最大の妨害物である核抑止力の呪縛を断ち切ること、第二に「核兵器禁止条約」に日本政府が速やかに参加すること、第三に核不拡散条約(NPT)第6条に基づく核軍縮・撤廃の義務の履行を核保有国に迫ること、を挙げました。そして、「草の根の運動を広げ、核兵器のない世界実現のために共に頑張りましょう」と呼びかけました。
 最後にすべての国の指導者に核兵器廃絶に向けた緊急の行動を訴える広島決議、「広島からすべての国の政府への手紙」が採択されました。
 その抜粋です。「5月に広島で開かれた主要7か国首脳会議(G7)は、核兵器は『侵略を抑止し、戦争と威圧を防止する』と、『核抑止力』論を公然と宣言しました(核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン)。『核抑止』とは、ヒロシマ、ナガサキの惨劇をもたらすことを前提にした威嚇に他なりません。私たちは、被爆地と被爆者を愚弄するこの宣言を断固として拒否します。被爆地・広島から発信すべき真のメッセージは、核兵器の使用とその威嚇を許さず、核兵器のない世界を一刻も早く実現することに他なりません。‥‥史上初めて核兵器を違法化した核兵器禁止条約(TPNW)を発効し、支持と参加が広がっていることは、私たちにとって大きな希望です。‥‥私たちは市民社会の一員として、諸政府、国連機関と共同して、『核兵器のない世界』の実現に向けて尽力する決意を表明します。原水爆禁止2023年世界大会に参加した私たちは、日本の政府が『核の傘』への依存をあらため、核兵器禁止条約に参加するよう力を尽くします。あなた方が、この広島からの訴えに応えて、行動されることを心から希望します。」

いのちをえらびとる断食の祈り


 日本宗教者平和協議会(日本宗平協)は8月5日、核兵器使用の危険が高まる重大な情勢のもと広島平和公園の原爆供養塔前で「いのちをえらびとる断食の祈り」を広島YMCAのご協力を得て行い、浄土真宗、日蓮宗、キリスト教などの宗教者が、それぞれの形で祈りを捧げました。
 1983年8月に「宗教NGO」が立正平和の会が中心に原爆犠牲者に回向を捧げ、原水爆禁止、核兵器廃絶、被爆者援護法制定などを呼びかけて座り込んでから40回目の節目の断食の祈りとなりました。又、会場では原爆と人間のパネル展を行い、道行く人に核兵器廃絶と戦争が絶対悪であることを訴えました
 6歳の「国民学校一年生」の朝礼のときに被爆した小笠原伸江さん【写真下】が約1時間にわたり被爆と枕崎台風来襲の体験を語たり、『木の葉のように焼かれて』(今年の最新号)に掲載されている職業軍人だった父親の手記を紹介。「G7(主要7カ国)サミットの『核抑止力』論を公然と主張し正当化する結果は被爆者と被爆地、県民を冒とくするもの。核兵器禁止条約が発効しその広がりに希望を感じています」と述べ、「一日も早い核兵器廃絶を」とよびかけました。
「平和の祈りを行動の波へ」「兵戈無用」の幟を掲げた祈りの集いには、石川県七尾市の長谷川等伯の生家の菩提寺・本延寺から河崎俊宏師が父俊栄師の遺影【写真上】とともに4名が駆けつけるなど東京、神奈川、静岡、石川、京都、大分、そして地元広島から浄土真宗関係者と故宗藤尚三牧師夫人の信江さん、連日供養塔の清掃を続けておられる渡辺和子さんら計20余名が参加し祈りを捧げ、交流しました。               (樋口重夫)

とうろう流し


 8月6日夕方、原水爆禁止2023年世界大会―ヒロシマデーの最後の行事の「ヒロシマーとうろう流し」が4年ぶりに、元安川の河川敷で再開しました。コロナ禍で中止せざるを得ませんでした。
 主催者を代表して世界大会広島県実行委員会の建交労広島の山田昭夫委員長があいさつしました。
「今年の原水爆禁止世界大会は、あの米ソの冷戦時代以降最大の核戦争の危機を迎える中、この灯ろう流しが開催されたといっても過言ではないと思います。ロシアのプーチン政権は「ウクライナが反転攻勢で、領土を奪い返すなら核攻撃も辞さないと」と明言しており、核兵器をもてあそぶ姿勢をあらわにしています。」とのべ、先のG7広島サミットの「広島ビジョン」では、核兵器について「侵略を阻止し」そして「戦争および威圧を防止する」と核の抑止力を肯定しました。被爆者として被爆国日本の国民として許すことはできません。 強く抗議します」と強調しました。
 「核兵器廃絶への道は、核兵器禁止条約の批准国が68カ国と広がり前進していることを確信に岸田政権に署名批准を求める運動を世論と運動を強め、大軍拡反対、憲法9条を守れ!戦争NO!のたたかいをさらに強めようではありませんか」と呼びかけました。
 このとうろう流しは、日本の民族的な宗教行事。広島では78年前の今日原爆に焼かれ放射能を浴び、苦しんでいった被爆者を弔い、地球上から核兵器をなくすことを誓ってこの元安川においてとうろうに火をつけ流します。点火式を行い後、とうろうに火を灯し、核兵器廃絶の誓いを込めて川面に流しました。大会参加の海外代表が紹介されました。
 同時に日本宗教者平和協議会の有志による原爆犠牲者追悼の祈りが拝読されました。浄土真宗による伽陀、表白、阿弥陀経を広島・真宗学寮教授の岡本法治師の導師で施行され、広島宗平協の会員・僧侶が参加し、たくさんの方が焼香しました。
 このとうろう流しには、海外代表はじめ被爆者、大会参加者の150人が参加しました。

日本宗教者平和協議会事務局長  森 修覚