声 明 故安倍元首相の「国葬」に反対する
2022年7月25日 日本宗教者平和協議会
岸田首相は閣議で、銃撃による殺害という蛮行によって命を奪われた安倍晋三元首相について、この秋に「国葬儀」の形式で葬儀を行うことを決定した。その理由として、安倍氏の「東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸にした外交の展開などの大きな実績」を称えるためとしている。
私たちは、参議院選挙の最中に行われた安倍氏の銃撃殺害事件に対し、自由と民主主義を根本から破壊する蛮行と糾弾し、満身の怒りを込めて抗議した。また、その非業の死に対しては、心からの哀悼の意を表するものである。
しかし、「国葬」とは、国民の税金、貴重な国費を使って亡くなった人の「功績」を称賛し、そうした特定の評価を国民に押し付けることに他ならない。これは、日本国憲法の定める国民主権、思想・良心の自由と民主主義の原則とは全く相容れないものである。私たちは「国葬」の実施に強く反対するものである。
私たちは特に、「戦争する国づくり」のため安倍首相の「日米関係を基軸にした外交の展開」を評価することには絶対に同意できない。安倍首相は、自らの「血を流す同盟」づくりの信念の下に、閣議決定で、憲法解釈を集団的自衛権行使可能なものに変更し、国民の強い反対を押し切って安保法制(戦争法)を強行し、立憲主義を根本から破壊した。さらに、首相在任中に勝手に「敵基地攻撃能力」保有に向けた新たな安保政策策定を指示し、それが今日の「敵基地攻撃」大軍拡推進、軍事費倍増の動きにつながっている。私たちは日本国憲法を破壊するこのような「実績」を評価することは到底できない。
国民の中には、様々な意見があり得るにもかかわらず、政府の一方的な評価のみによって「国葬」の実施を国民に押し付け、その儀式を国民の血税を使って行うようなことは、決して許されない。国民主権・基本的人権・平和という日本国憲法の大原則を蹂躙する「国葬」への反対を私たちは強く表明するものである。
いのちをえらびとる断食の祈り
「平和の波」が呼びかけられるなか、日本宗教者平和協議会(宗平協)は8月5日午前10時から、広島市中区の平和公園内にある原爆供養塔横で世界大会関連行事の「いのちをえらびとる断食の祈り」を行いました。
今年もコロナ禍のなか感染予防をしながら規模を縮小して実施し、各地から浄土真宗、日蓮宗、曹洞宗、キリスト教など宗派を超えた宗教者がつどい、「核兵器も原発もない21世紀のために」各宗派の祈りをおこないました。
この断食のいのりは今年で39回となり、「原爆と人間」展パネルと福島県楢葉町の宝鏡寺の「非核の火」ろうそくを掲げ、各宗の祈りと被爆者の証言をうかがいました。
今年は、3歳のときに被爆した梶山恭良さん(80)が被爆体験と平和への思いを語りました。中庭にいた梶山さんとお兄さんは奇跡的に助かりましたが、爆風が直撃した家は倒壊、台所で炊事中だった母親を亡くしました。「被爆者は77年たった今も原爆症に苦しんでいますが、いつまた同じようになるか分からない。一人ひとりが戦争の悲惨さと平和の大切さを伝え続けなければなりません」と訴えました。
表 白
今から77年前、1945年8月6日、この広島の地に投下された原子爆弾。一瞬の閃光、灼熱、そして、降り注いだ放射能。多くの人々が水を求めては倒れ、親子・家族の名を呼びながら息途絶え、或いは、あまりの高熱に骨すらも残らず亡くなっていった人々のいのちの上に、供養塔の前に、今、私たちは立っているのです。
本日ここに、宗派を超えて、「いのちをえらびとる断食の祈り」にあたり、当時、何の罪もなく、何も知らされずに核兵器の犠牲となり、尊いいのちを奪われていった人々の無念さを思うとき、今を生きる私たちができることは、この過ちを二度と繰り返してはならないことです。
ノーモアヒロシマ・ナガサキ、ノーモア核兵器、ノーモアビキニ、ノーモア被爆者、そして、ノーモアフクシマ…。もうこれ以上の「ノーモア」を作ってはならないのです。
2021年の1月、核兵器禁止条約が発効され、核兵器は国際法で違法となりました。いま、批准国は66カ国、6月、条約締結国会議、8月、NPT会議が開かれ、核兵器廃絶へ確実に前進しています。戦争被爆国の日本の政府が署名批准するよう運動を新型コロナ禍の中、進めてまいります。
いま、日本の岸田政権は「戦争する国」へ、「憲法九条」の改憲を狙っています。戦争当時、私たちの教団も、国策に迎合し、宗祖親鸞聖人の、仰せになきことを仰せとして多くの人々を戦地に赴かしめ、多くの人々のいのちの尊厳を侵しました。懺悔の念から生み出された憲法九条を世界中の僧伽(サンガ)に「兵戈無用」の実践として、呼びかけていくことを誓います 世の中安穏なれ、仏法広まれ。
2022年8月5日 釋修覚 謹んで申す
笹の墓標展示館
全国巡回展 富山開催
富山宗平協 永崎 暁
真宗大谷派富山別院の本堂を会場に、7月27日より8月1日まで「笹の墓標展示館 全国巡回展」を開催しました。
北海道では、1976年から殿平義彦氏(北海道一乗寺住職)を中心として、強制連行・強制労働(日本人・朝鮮人)の調査と遺骨の掘り起こし・遺骨返還などが継続して行われてきました。この運動はやがて市民を巻き込んだ民衆史掘り起こし運動と繋がり、さらに殿平氏と韓国の鄭炳浩(チョン・ビョンホ韓国漢陽大学文化人類学科名誉教授)の偶然の出会いをきっかけに、日本、韓国、在日韓国・朝鮮人の大学生などが合宿をしながら遺骨発掘をする「日韓共同ワークショップ」が始まりました。
「笹の墓標展示館」は、発掘された歴史資料の展示や遺骨の安置・追悼をするだけではなく、遺骨発掘のワークショップを通じた東アジア市民の若者たちの交流の中心となる施設でした。しかし、その大切な展示館は雪の重みで倒壊し、また残る建物も火災によって失われてしまいました。「笹の墓標展示館全国巡回展」は、難を逃れた展示品を全国で巡回展示することにより、北海道朱鞠内の現地へ足を運んでいただけない方に展示館を知っていただくとともに、展示館の再生にむけた募金の呼びかけとして、北海道はもとより全国各地で開催されています。
5月に名古屋開催の実行委員の方よりご縁をいただき、急ぎ不二越強制連行訴訟支援連絡会や富山宗平協、真宗大谷派・本願寺派僧侶など含めた実行委員会を立ち上げて、各所への呼びかけを行い、無事に開催することが出来ました。
展示館の資料は、「笹の墓標展示館再生実行委員会」の事務局、金英鉉(キンヨンヒョン)さんに北海道から運んでいただき、また金さんには期間中に2回の講演をしていただきました。
来場者は、金さんの講演会に参加された100名と、期間中に会場にて展示の解説を受けていただいた方とあわせて250名以上でした。来場者へは、金さんを中心として実行委員による展示の解説を行いましたので、強制連行・強制労働の歴史と、東アジアの若者たちの連帯についてより深く理解してもらえたのではないかと思います。
これまで富山別院では、東本願寺の「非戦平和展」のパネルをお借りして、7月下旬から8月にかけて平和祈念展を毎年開催していましたが、ただ本堂内にパネルを展示するのみでしたので、今回のように来場者一人ひとりに展示品の解説を聞いていただくことができたことは、非常に意味のあることでした。
毎年この時期には、富山別院で3日間の暁天講座と8月1日の富山大空襲の日にあわせた戦死戦災死者追弔法要が勤まります。その時期にあわせてこの全国巡回展が開催できたことは、日頃こういったことに関心のなかった方にも、強制労働の歴史と、市民レベルでの東アジアの和解と友好の構築の大切さを伝えられたのではないかと思っています。
今後この全国巡回展は、9月に大阪・浄土真宗本願寺派津村別院、10月に東京・築地本願寺と京都・西本願寺で開催されます。どうぞ足を運んでいただいて、直接その目で資料に触れその耳で金さんの講演をお聴きいただきたいと思います。金さんの講演は未来への新しい視点です。これまでの被害・加害といった関係性だけではなく、過去を直視しながらこれからの未来をどのようにつくっていくのか、東アジアの未来に希望の種を蒔こうとする笹の墓標展示館のあゆみをとおして、それぞれの平和へのあゆみをさらに考える機会としていただきたいと思っております。