核兵器禁止条約発効1周年
3・1ビキニデーを成功させ核兵器廃絶へ運動をひろげよう


日本宗教者平和協議会

 被爆者と私たち宗教者の長年の願いが実を結び、人類史上初めて「核兵器は全面的に違法」と明記した核兵器禁止条約が発効して1年が経過しました。
 1945年8月、広島と長崎に米軍が投下した2発の原子爆弾は両市を破壊し、筆舌につくしがたい惨状をもたらしました。そこで傷つき殺された人間の姿はもはや戦争の様相を質的に変えるものでした。広島・長崎の被爆者は、世界中の誰にも同じ苦しみを味わわせてはならないと原爆が人間にもたらした被害を究明しながら人間として死ぬことも、生きることも許さない原爆の反人間性を国内外で訴え、ふたたび被爆者をつくるなと核兵器のない世界を求めてきました。
 核禁条約を署名・批准した国はさらにひろがり59カ国となっています。また、ノルウェーやドイツなどが締約国会議へのオブザーバー参加を表明したのをはじめ、核保有国内でも禁止条約を支持せよとの声が高まっています。
 今年1月には第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議が、3月には核禁条約発効後初めての締約国会議が開かれる予定でしたが、NPT再検討会議は8月に、締約国会議は「ことし半ばに」それぞれ延期となりました。
 ひきつづき、唯一の戦争被爆国を自ら標榜する日本政府に「いますぐ参加せよ」と条約へのすみやかな署名・批准を求める運動を強めましょう。日本政府と核保有国に締約国会議への参加を求めましょう。
 今年1月3日、核保有5カ国は「核兵器国間の戦争回避と戦略的リスクの軽減が最も重要な責務だ」と確認する共同声明を発表しました。声明は、核禁条約にはふれずに、「核戦争に勝者はおらず、決してたたかってはならないことを確認する」と強調。同時に「核兵器が存在する限りは、その役割は防衛目的であり、侵略を抑止し、戦争を防ぐためのものだと確認した」と核兵器に固執、核抑止力に依存し、保有を正当化しています。共同声明が核兵器に固執する一方、核廃絶へ真剣な交渉を行うとした核不拡散条約第6条の義務を履行するとしています。
 共同を築き、核兵器の非人道性を訴え、禁止条約に参加する日本の実現、「核兵器のない世界」へ3・1ビキニデーを契機に運動を積み上げ、前進させましょう。

いま、キリスト者として憲法を考える

池住 義憲  


4.2005年からの改憲の動き 

 9条解釈をここまで変えながら、改憲勢力は併行して着々と改憲の動きを積み重ねてきました。まず2005年10月、自民党は「新憲法草案」を発表。現行憲法と対照させた全99条。前文はすべて削除・改変してありました。9条に関する部分をやや詳しく見ておきます。
 現行憲法第二章のタイトルは、「戦争の放棄」です。まずこれを「安全保障」に変える。武力による威嚇・行使を「永久に放棄する」から、「用いない」に変える。「交戦権を認めない」から、「自衛権の発動を妨げるものではない」に変える。この段階で「緊急事態」の章立ては、まだありませんでした。
 9条第2項を追加し、国防軍の保持、国防軍に裁判所(いわゆる軍事裁判所)設置を明記する。そして、「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」と追記する。
 これは、国民の領土等保全の義務化とする部分です。この草案発表後に政府・与党は、教育基本法を改正(2006年12月)、防衛庁を防衛省へ昇格移行(2007年1月)、国民投票法を成立(2007年5月)させました。
 2012年4月、自民党は名称を変えて「日本国憲法改正草案」を発表します。全102条で、内容は前の新憲法草案とほとんど同じです。しかし一カ所だけ、大きく変わったところがあります。それは、前になかった「緊急事態」の章を新たに章を立てたことです。具体的内容はすべて“他の法律で定める”あるだけで、詳細はわかりません。
 その後も政府与党は、着々と関連・関係法を作っていきます。特定秘密保護法の成立(2013年12)、防衛装備移転三原則を閣議決定(2014年4月)、安保関連法を成立(2015年9月)、組織犯罪処罰法(共謀罪法)を成立(2017年6月)、などです。
 2018年3月、自民党憲法改正推進本部は、改憲の動きを進め易くするため、改憲を4項目に絞った「たたき台」、いわゆる「改憲4項目」を出します。4項目とは、①9条に自衛隊明記、②緊急事態条項創設、③合区解消、④教育の充実、です。
 そして、2021年1031日衆院選。結果は、改憲勢力(自民/公明/維新)が、改憲発議に必要な3分の2を得ました。これを受けて岸田首相は、党是である憲法改正を進めるため党内の体制を強化すること、国民的議題のさらなる喚起と国会における精力的な議論を進めることの2点を指示。
 1119日には、憲法改正を来夏参院選での主要争点にすること、一部が国会の議論が進むなら四項目同時改憲にこだわらないことを内閣記者会で述べました。そして同日、これまで自民党本部会館に掲げられていた「憲法改正推進本部」看板を、「憲法改正実現本部」に名称変更して掲げ直しました。
 簡単に云うと、改憲勢力が考えている改憲とは、国民主権国民主権の縮小/戦争放棄戦争放棄の放棄/基本的人権の尊重基本的人権の制限、に思えてなりません。こうした状況のなかで私はどうするか

5.今後へ向けて―平和をつなぐ

 オランダにNOVIB(1956年結成)という国際開発NGOがあります。1970年代後半頃、NOVIB作成の『あなたが社会を変えることができる100カ条』という文書を入手しました。そのトップ第1条に何が書いてあったか。
 それを見て私は「これだ!」と思い、納得しました。トップに書いてあったのは、「無気力感を克服すること」(Overcome the numbness)!
 「私が動いても、社会は変わらない」、「私が一票投じても、政治は変わらない」…。100カ条は、あなたにできる、いや私にできる第一のことは、そうした自分自身の無気力感・無力感を克服することですよ、と呼び掛けている。
 「憲法を守る」、いやより厳密に云えば「憲法を守らせる」。そのため、自分の周りから、自分のしたいこと(want)、出来ること(can)、すべきこと(should)又は社会で意味あることを、する。以来40年以上今日に至るまで、これが私の原点になっています。
 最後に、日本ルーテル神学大学に所蔵されている『手のないキリスト』像の絵を紹介します。この絵、私たち一人ひとりに呼び掛けていませんか。問い掛けていませんか。“私の手になってくれ。言葉や口先だけじゃなくて、行いと真実をもって…”と。
 紀元前8世紀のイザヤ書から今日の日本国憲法第9条まで、繋いできた私たちの平和への願い。それがいま、変えられようとしている。宗教の違いを超え、「平和の創り手」「平和の担い手」となって、残された豊かな時を生きる者でありたい。平和を、つなごう。(了)