「宗教と平和」購読料改定について
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東日本大震災・福島原発事故10年
核兵器も原発もゼロへ「非核の火」をともす式典
上野の森に「広島・長崎の火」を永遠に灯す会が1990年7月以来、東京・上野東照宮に30年間灯し続けてきた原爆投下後の広島から持ち帰られ、福岡県八女市で保管されていた残り火に、長崎の被爆瓦を使っておこした火を合わせた「広島・長崎の火」「核兵器をなくし、平和を実現する誓いの火」が、原発被害を受けた福島県に「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマを結ぶ『非核の火』」として引き継ぎ、伝言の火として点火する式典が東日本大震災・原発事故10年を迎えた3月11日、楢葉町の宝鏡寺で開かれ、各地から130人以上が参加しました。
式典では呼びかけ人を代表して弁護士の広田次男さんが開会あいさつ。「非核の火」を灯す会共同代表の伊東達也さんが「福島は10年の時が流れても、ふる里を離れて避難した多くの人が戻らず、復興どころか復旧も程遠い中にあります。そのおおもとにあるのは福島原発の事故が発生したことです。核兵器も原発も人間がつくったもので、人間の力でなくせる。『これ以上ヒバクシャをつくるな』『二度と原発事故を起こすな』の声を日本と世界に伝える決意です」と主催者あいさつし、境内の記念碑に点火され、その隣に設置された「原発悔恨・伝言の碑」が除幕されました。
「広島・長崎の火」を灯す会の小野寺利孝弁護士は、「新たな祈りと誓いを通じ、福島の皆さんとつながることになりました。恒久的に灯してほしい」と述べ、宝鏡寺住職の早川篤雄さんは、「安全神話」のもと起こるべくして起きた原発事故で「豊かな自然、平和な暮らし、地域が奪われた」と述べ、「環境や命、ふるさとを奪う核被害は許さない」「人類の幸福と進歩は平和なくして不可能」と強調し、核兵器禁止条約が発効した今年、核兵器をなくし、平和を実現する誓いの火を世界平和光明の灯として原発事故被災地で継承してまいりますとあいさつしました。
「原発悔恨・伝言の碑」設置者の安斎育郎立命館大学名誉教授が、ウィーンのユネスコクラブから本日付けで「地球市民賞」を受けたことを報告し、原発事故の教訓などを発信していくと語りました。
諸宗教のよる祈りのつどいでは平沢功日本キリスト者平和の会事務局長とともにキリスト者約15名が登壇。京都の出口玲子さんが清水寺での「6・9行動」が50年を迎えた取り組みや核兵器禁止条約発効を3・1ビキニデーで久保山愛吉さんの墓前に報告できたことを語り、「主の祈り」を唱え、東京宗平協の小嶋弘遵さんのアコーディオン伴奏で讃美歌「勝利を我らに」を賛美しました。
記念碑の隣には資料館が併設されました。2階には原発事故の教訓を中心に、1階には原爆被害や第五福竜丸などが被ばくしたビキニ環礁での水爆実験の資料などを展示されています。
被災67年3・1ビキニデー
久保山愛吉墓前祭の誓いの言葉
日本原水爆被害者団体協議会事務局長
木戸季市
久保山愛吉さん。ビキニ事件から67年目の3月1日を迎えました。
霊前に、核兵器禁止条約の発効を報告します。条約は、核兵器を全面的に禁止し、違法化しました。ヒバクシャと核実験の被災者の受け入れがたい苦難と被害に留意してつくられ、核兵器の全面廃絶を目指すこと、被害者に対する支援などが定められています。
核兵器禁止条約は、「原水爆の被害者は、私を最後にしてほしい」という久保山さんの願いを実現する新たなスタートと確信します。私たち被爆者は、あらためて、久保山さんの願いを実らせるために努力することを誓います。
被爆者は、条約の成立に寄与しました。2013、14年に開かれた「核兵器の人道上の影響に関する国際会議」、16年のオープンエンド作業部会、17年の条約交渉会議など一連の会合に参加し、また16年4月からは「ヒバクシャ国際署名」運動を展開して、核兵器の禁止・廃絶を訴えました。
残念なことは、「唯一の戦争被爆国」を自称する日本政府が条約に背を向けていることです。政府は、核兵器の廃絶を究極的目標として先延ばしにし、核保有国と非保有国との橋渡し役が日本の任務であると言ってきました。しかし、それは口先ばかり、アメリカの「核の傘」に依拠し、核保有国の立場に立ち、何もしていません。恥ずかしい限りです。憤りを禁じえません。
どうして、日本政府は核兵器禁止条約に背を向けているのでしょうか。私は二つの理由があると思います。一つは、先の戦争への反省がない・戦争責任をとっていないこと、もう一つは、国の戦争のためならすべての国民が「生命・身体・財産」の犠牲を受け入れガマンしなければならないという「戦争犠牲受忍論」です。
私たちは、このような態度を受け入れることはできません。核兵器も戦争もない世界を求めます。
国民の7割が、日本は核兵器禁止条約に参加すべきと考えています。
国民は、平和に、人間らしく生きることを求めています。
それが、久保山さんが願った原水爆の犠牲者をつくらないことにつながっています。そのために、日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を守る努力を約し、墓前の誓いの言葉とします。
2021年3月1日
原水爆禁止世界大会実行委員会
運営委員会共同代表 高草木博
久保山愛吉さん
あなたと第五福竜丸をはじめ多くの漁船乗組員のみなさんがビキニの海で被災してから67年が経ちました。
あの年、「原水爆の被害は私を最後にして欲しい」とのあなたの言葉を胸に起ち上がった人たちの声は日本と世界の人々を動かし、ことし一月、核兵器禁止条約が発効しました。
現在、52の国々が参加するこの条約は、国際紛争の武力による解決を禁じた国連憲章、原子兵器、大量殺りく兵器の軍備の一掃を誓った国連総会第一号決議をはじめ、人類が達成した歴史的合意を体現するものです。
核大国や核依存国のリーダーは、いまも核兵器の保有を自国の安全のためといい、核兵器の廃絶に抵抗しています。しかし、国連のリーダーも言うように、核兵器の廃絶には一部の国の安全に止まらず、人類全体の生存と文明の存続がかかっています。
私たちはいま、核兵器のない世界を実現するために、とりわけ日本が果たすべき役割を重視しています。二度にわたる原爆の被害、そして水爆の被害を受けた国として、日本がやるべきことは、アメリカの核政策の一部を担ったり、沖縄に新基地をつくり、戦闘機やミサイルやレーダーを「爆買い」することでありません。国民の願い、世界の人々の期待に応え、核兵器禁止条約に入ることです。それこそが日本と世界の安全の道であり、コロナ、気候変動、貧困と格差など、人類が直面する問題の解決にも通じる道です。
私たちはそのためにいま、各界のみささまとともに日本政府に核兵器禁止条約の署名と批准を求める署名運動を展開しています。ここに、私たちがことし必ず新しい前進を実現することをお約束して、誓いの言葉といたします。
全国労働組合総連合
副議長 川村好伸
アメリカによるビキニ環礁での水爆実験から67年の歳月が過ぎました。久保山愛吉さんの「原水爆の犠牲者は、私を最後にしてほしい」との願いが、そして広島、長崎の被爆者をはじめとする諸国民の運動が国際社会を動かし、核兵器を非人道兵器として違法化した禁止条約が1月22日に発効しました。
被爆者を先頭にした原水爆禁止・核兵器廃絶を求める平和運動の歩みと、そして一人ひとりの平和への思いを集めた署名の力によって、核兵器禁止条約を発効させたことは、今を生きている私たちの大きな確信になっています。
核兵器禁止条約は、前文において、いかなる場合にも核兵器が再び使用されないことを保障する唯一の方法は、完全に廃絶することとうたい、核兵器の使用と実験による被爆者の容認しがたい苦しみに留意して、核兵器の使用のみならず威嚇も禁止し、核兵器の実験も開発も生産も保有も禁止しました。
しかし、アメリカをはじめとする核保有大国は禁止条約に敵対しています。日本政府もアメリカの核抑止力にしがみつき、禁止条約への参加を拒否するばかりか、アメリカの核戦略に与して在日米軍基地の増強をすすめ、敵基地攻撃能力の保有にむけた動きを強めています。
いま、新型コロナ感染症・パンデミックが世界の人々に襲いかかり、感染者は1億1千万人、死者数も250万人を超えています。核兵器や軍事力は新型コロナウイルスに無力であるばかりか、巨額の財政が核兵器や軍事費に投入され、救われるはずの多数の命が失われています。
いま、多くの国民が、唯一の戦争被爆国である日本政府が核兵器禁止条約に参加することを求めています。私たちは、核兵器禁止条約の発効を力に、核兵器のない世界を実現するために力を尽くします。日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名を大きく広げ、今年行われる総選挙で禁止条約を批准する政府を実現するために奮闘することをお誓いし、墓前の言葉といたします。
2021年3月1日
新日本婦人の会中央本部
太平洋・ビキニ環礁での被災から67年、3月1日の墓前祭を迎えました。
久保山愛吉さんをはじめ犠牲になられた方々を偲び、核兵器禁止条約の発効により「核兵器のない世界」をめざすたたかいは、新たな段階に入り、決意を新たにしております。また、墓前祭の毎年、執り行なってこられた日本宗教者平和協議会のみなさま方に、感謝申し上げます。
1月22日の核兵器禁止条約の発効日、コロナ禍のもとですが、新婦人は工夫しながら日本中でスタンディングや署名、ポスター掲示など、お祝い行動を広げました。「おめでとう」「よかったですね」の声とともに「被爆国なのに批准しないのはおかしい」と日本の政府への怒りも共通です。唯一の戦争被爆国の政府でありながら、アメリカの「核の傘」に依存し、「条約に署名する考えはない」と言い切る菅政権の態度は決して許されません。条約に参加する政府を実現することは、日本の運動に課せられた国際的責務です。
新日本婦人の会は、コロナ禍の中でも政府や自治体に対し、女性・国民の命と健康、雇用を守り、子供たちの学びの保障など支援策の拡充を繰り返し要請し、要求を実現してきました。引き続き、女性たちが声を挙げ、生きづらい社会を変える、ジェンダー平等で平和・持続可能な社会へ、日本国憲法を重ね、とりくんでいきます。
「原水爆の犠牲者は私を最後に」ー久保山愛吉さんの言葉に胸に刻み、核保有国や「核の傘」依存国で自国政府を変えるためにたたかう世界の女性や反核平和運動と連帯し、日本政府に条約批准を求める署名を大きく積みあげます。来る衆院選挙では、禁止条約を批准する野党連合政権の実現をめざし、力をつくす決意をのべ、「誓いの言葉」といたします。
2021年3月1日
日本共産党中央委員会
幹部会委員・宗教委員会責任者 土井洋彦
久保山愛吉墓前祭にあたり、日本共産党を代表して、誓いの言葉を申し上げます。
はじめに、この墓前祭のために弘徳院境内地を提供してくださり、読経をお勤めくださったご住職様と、焼津市仏教会の皆様に、心からの感謝を申し上げます。
今年の3・1ビキニデーは、1954年のビキニ水爆被災事件を契機に広がった原水爆禁止運動が一貫して求めてきた核兵器禁止条約が1月22日に発効し、核兵器が違法化されたなかで迎えました。核兵器禁止条約の発効は、広島・長崎の被爆者をはじめ、「核兵器のない世界」を求める世界の諸政府と市民社会の共同した取り組みによる画期的成果であり、心から歓迎いたします。墓前祭を主催する日本宗教者平和協議会が、結成以来一貫して核兵器廃絶を訴え、その実現のために行動されてきたことに、深く敬意を表します。
人類の歴史で初めて「核兵器は違法」とする国際法が誕生したことは、巨大な意義をもちます。条約の発効は、核兵器保有国や核兵器に依存する国を「国際法違反の国」として、政治的・道義的に追い詰めていく大きな力を発揮することになるでしょう。米国を先頭とする核保有5大国が共同して条約に敵対・妨害するもとで、途上国を含む多くの国ぐにがその圧力をはねのけ、条約の批准に至り、支持を広げています。昨年12月の国連総会では、条約参加を訴える決議に130カ国が賛同し、国連加盟国の3分の2を超えました。
日本政府が、世界の流れに背を向けて「核抑止力の維持・強化」を持ち出し、国民多数が望む禁止条約への参加を拒否していることは恥ずべき態度であり、内外で失望を広げています。唯一の戦争被爆国である日本が条約に参加すれば、「核兵器のない世界」の実現に向けて大きな前向きの変化をつくることは疑いありません。核兵器禁止条約に署名・批准する新しい政権をつくるために全力をつくす決意をのべて、誓いの言葉といたします。
2021年3月1日
日本民主青年同盟中央委員会
アメリカによるビキニ水爆被災から67年が経過しました。毎年「原水爆の被害者は、わたしを最後にしてほしい」という久保山さんの言葉を噛みしめています。今年は現地に赴ことは叶いませんでしたが、激動の中で、感慨深く3月1日を迎えています。
2021年1月22日、遂に核兵器禁止条約が発効されました。
歴史を紐解けば、私たち日本の国民は、広島、長崎、ビキニと三度原水爆の被害を体験しました。日本国民は、過去の経験から原水爆の非人道性を学び、全国各地で原水爆禁止署名運動に立ち上がりました。ビキニ事件を契機に始まった原水爆禁止を求める人々のうねりが「核兵器の違法化」という歴史の新たな1ページを切り開きました。
一部の核保有国の妨害行為にも関わらず、圧倒的多数の世界の市民と政府の力で核兵器禁止条約が発効されたことは「核兵器のない平和な世界」こそ、歴史の本流であることを物語っています。
世界が平和に向けて大きく舵を切る一方で、菅政権は禁止条約の参加を拒否しています。広島・長崎・ビキニを経験してきた国であり、被爆者の切なる思いを背負っている国として、あるまじき態度です。
しかし、私たちの運動で、日本を変え、世界を動かすチャンスです。
今年の秋までには、必ず総選挙が行われます。この総選挙に向けて、私たちがより一層運動を広げれば、野党連合政権を実現し「核兵器禁止条約に参加する日本政府」をつくる大きな近道となります。日本政府が禁止条約に参加すれば、禁止条約を力に核廃絶を実現する流れはますます加速するでしょう。
新型コロナ・パンデミックが社会の矛盾をあぶりだしています。「核兵器のない世界の実現」は、人類と地球の未来のために、必ず達成しなければならない目標だと多くの人々が気づき始めています。激動の情勢の中、久保山さんの言葉を嚙みしめ、世界と日本で始まった新しい政治を生み出す胎動を力強く発展させる先頭に立つことを決意し、誓いの言葉とします。
2021年3月1日
3・1ビキニデー静岡県実行委員会
日本科学者会議静岡支部代表幹事
谷 健二
第五福竜丸の水爆被災から67年を迎える今日3月1日、久保山愛吉さんの墓前に立ち、あなたの「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」との遺言の大切さを改めて強く感じています。ここに、3・1ビキニデー静岡県実行委員会を代表して、核兵器廃絶と平和な世界の実現に向けて一層力を尽くすことをお約束する「誓いの言葉」を捧げます。
新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響を受け、昨年の3・1ビキニデー集会は中止となりましたが、本年のビキニデー集会は、「核兵器禁止条約発効を力に、核兵器のない世界を実現しよう」を合言葉にオンラインで開催されることになりました。
2017年7月核兵器禁止条約が採択され、2020年10月ホンジュラスの批准で批准国が50カ国に到達。そして、2021年1月22日核兵器禁止条約がついに発効され、「核兵器のない世界」を達成するための新しいステージが始まりました。
条約発効により、核兵器は国際法上違法とされ、その開発・生産・保有・実験・使用等核兵器に関するあらゆる行為が禁止となります。世界の反核平和運動の大きな成果であります。一方、日本政府は唯一の戦争被爆国を自称しながらも核抑止力に頼り、安倍前首相と同様に菅首相も「核保有国と非保有国の橋渡し役として国際社会の取り組みをリードし」と、「橋渡し」を強調し、核保有国の代弁者、また核廃絶の妨害者ともなっています。今年8月には延期されたNPT再検討会議および核兵器禁止条約の第1回締約国会議も予定されています。
被爆国日本はただちに、アメリカの「核の傘」から抜け出し、率先して核兵器禁止条約に署名・批准する責任があります。今こそ、草の根の世論と運動で「核兵器のない世界」に向けて大きな変化をつくるたたかいが求められています。さらにビキニ被災の全容調査と被災者救済と補償も求められています。
ビキニ被災67年、広島・長崎の被爆76年、被爆国日本が核兵器禁止条約の署名・批准・発効の先頭に立つ国となるよう、非核平和をめざす全国の草の根の活動と共同のたたかいを通じて、「核兵器のない世界」の実現に向けた新たな運動を切り開くことに全力を尽くしていく決意をここに表明し、「誓いの言葉」といたします。
2021年3月1日
沖縄南部戦跡地の土砂を辺野古埋め立て用に採取してはならない
OC C総会声明
2021年2月28日沖縄キリスト教協議会( OC C )
私たち沖縄キリスト教協議会( OC C )は、辺野古新基地建設に初めから反対してきました。辺野古新基地建設の従来の計画では、埋め立て用土砂の多くを県外から調達し、県内の採取場所は本島当北部のみとなっていましたが、変更後は離島を含む県内全域に拡大。仮定している採取量を大きく上回る土砂の調達は、県内で可能としています。
県内の地区別でみると南部地区(糸満市、八重瀬町) で土砂の調達可能量の約7 割を占めています。南部では現在も多くの沖縄戦犠牲者の遺骨が未発掘で、採石場などで土砂を採取すれば遺骨が含まれる可能性があり、埋め立てに使われることで失われてしまう恐れがあります。
これまで約40年間、遺骨の収集や遺族への返還に取り組んできた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは「戦没者の遺骨を、軍事基地を造るために海に埋め立てに使うことは許されない。犠牲者に対する冒涜だ」と語ります。
「骨が含まれていなくてもおびただしい犠牲者が出た地域の土や岩を、戦争に出撃するための基地の建設に使うこと自体が不謹慎で、犠牲者の意志に背くのではないか。県外出身で、沖縄戦で亡くなった人もたくさんいる。沖縄の遺骨問題は全国の遺族の問題でもある」とも訴えています、
特に糸満市の土砂採取候補地は政府が保護し、沖縄県が管理する沖縄戦跡国定公園内に位置し、土砂が採取された場合、戦没者の遺骨がうずもれた土台の上に新基地を建設することになります。政府がすべきことはこの地を慰霊追悼の地として保全し、丁寧に遺骨を収集し戦争の悲惨さを伝えていく場にすることです。
私たち沖縄キリスト教協議会は以上のことから沖縄南部の戦跡地を土砂採取のために開発すること、および辺野古埋め立てのために土砂採取することに反対します。
「ヒバクシャ国際署名」を宗教界(主に仏教界)に広める取り組み報告=「核兵器は悪である」完
吉川徹忍(浄土真宗本願寺派僧侶)
〇全日本仏教会(全日仏=1957年創設)は浄土宗の要請を受けて2019年11月14日、「しんらん交流館」(京都)で第26回理事会が開かれ審議の上、「ヒバクシャ国際署名」への協力が正式表明された。全日仏(第34期の会長、大谷光淳・浄土真宗本願寺派門主)には、日本の主要な59の宗派、37の都道府県仏教会、合計106の仏教団体が加盟している。
12月10日、全日仏は「ヒバクシャ国際署名への協力のお願い」をホームページに掲載しリンクをはった。「お願い」の中で、「本会は、仏陀の和の精神をもとに仏教文化の宣揚と世界平和を願う立場から、ヒバクシャ国際署名によって核兵器が廃絶され、世界の平和と環境、人権を尊重する活動に賛同し、署名活動への協力をしてまいります」と呼び掛けた。
核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効が明らかになった20年12月、「ヒバクシャ国際署名」活動への協力を訴えてきた全日仏は、条約発効を歓迎する声明を発表した。この中で、「核兵器の全廃に向けた世界的な動きは、あらたな段階に入った」と述べ、同時に「核保有国と唯一の戦争被爆国である日本が、この条約に参加していないことを憂慮している」と指摘し、日本政府の無責任な姿勢に苦言を呈した。
3「核なき世界基金」の取り組み
2020年夏(7月7日)、「『核なき世界基金』を支援する会」(広島本部:広島カトリック会館2F・幟町教会)が設立された。「核兵器禁止条約」発効に向けての「ヒバクシャ国際署名」活動の中、19年11月24日、ローマ教皇フランシスコが広島で、「原子力の戦争目的の使用は、倫理に反します。核兵器の使用は、倫理に反します。核兵器の保有は、それ自体が倫理に反します」と訴えた。パンフレット「核なき世界基金」設立の趣旨には、目的として「被爆75年・被爆地から『核なき世界を』を願う声を力にして核兵器を廃絶するため、支援網(ワン・コイン・ネット)を広げて行きましょう」と記されてある。
「支援する会」運営委員には、川崎哲氏(ICAN国際運営委員)・白浜満氏(カトリック広島司教)・高見三明氏(カトリック長崎大司教)含め5人。その運営委員の一人、私と同じ「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)運営委員でもある渡部朋子氏(ANTーhiroshima理事長)の依頼で、9月9日、榮俊英氏(本願寺広島別院輪番)との懇談会を企画。白浜司教、榮輪番、渡部理事長と私の4人で、別院輪番室での会合が実現した。
「基金」の紹介と協力依頼、宗教界の反核平和活動情報共有・連携について話し合った。
以来私も白浜司教と相談しつつ、「基金」への協力依頼を、仏教をはじめとした宗教界・市民に呼び掛け始めた。
4核兵器禁止条約発効日の原爆ドーム=HANWA集会21年1月22日
核兵器の使用のみならず、開発・実験そして保有などを全面的に禁じ、史上初めて違法とする核兵器禁止条約が、今年2021年1月22日に発効した。
当日、条約を祝い・記念する集いを「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」が企画した。HANWAスタッフが広島市中区の原爆ドーム東の広場に集まりキャンドルの設定をした。「核のない未来を 核兵器禁止条」(英文)というキャンドルメッセージの文字が暗闇に浮かび上がった。原爆ドームを背景に輝く文字はSNS(ネット交流サービス)で世界中に配信された。18時には、多くの被爆者や市民が集まりキャンドルの文字を囲んだ。
集いは渡部朋子さん(HANWA運営委員)の司会・全体進行で始まった。趣旨説明をしたのは、HANWAの共同代表・森瀧春子さん(82歳)。がんとの闘病を続け、世界の核実験“ヒバクシャ”と手を携え、「核と人類は共存できない」と一貫して訴えてきた。森瀧さんが述べたのは、原爆犠牲者への深い追悼の念と、未来を担う若者たちへの期待を込めたメッセージだった。
最後にHANWAの声明を、共同代表・足立修一さん(弁護士)が「私たちは、日本政府に対し、核兵器禁止条約に一刻も早く早期に署名・批准することを求める」と述べ、「核抑止力に依存した日本政府の姿を我々は拒否する」と力強く締めくくった。小武正教氏、私を含めた僧侶たちやキリスト教徒も協力・参加した。
5川崎哲氏から「ヒバクシャ国際署名」について、仏教団体への感謝の言葉 21年2月2日
【念仏者九条の会第30回全国集会ー共催:安芸門徒九条の会・非戦平和を願う真宗門徒の会】
浄土真宗本願寺派の住職・僧侶・門信徒たちは、「ヒバクシャ国際署名」活動などの非核・平和運動を推し進めていた。核兵器条約発効を受け、全国に呼びかけて2021年2月2日、「核抑止論、人間としておかしい!」をテーマに、川崎哲氏をメイン講師としたオンライン集会を開催した。念仏者九条の会・安芸門徒九条の会・非戦平和を願う真宗門徒の会の共催による。
条約発効の意義を宗教者みんなで共有し、条約批准国をさらに増やし、核廃絶運動の中で結果を見ずに亡くなった多くの被爆者の願いを継承し世界中から核廃絶を目指したい。日本政府には早急に批准してもらいたいという思いも込めた。講師は、川崎氏と箕牧智之氏(広島県原爆被害者団体協議会理事長代行、明覚寺総代長)の2人。
会場は本願寺広島別院で、14時~16時、鹿児島、山口、長野、福岡の各会場(別院、教務所)をオンラインでつなぎ、約110人が参加した。司会は吉崎哲真氏((安芸門徒九条の会)、2人の講師紹介は吉川が担当した。主催者の挨拶で、小武正教氏(念仏者九条の会共同代表)は「浄土真宗本願寺派は、教団を挙げて戦争に協力した過去がある。二度と戦争に力を貸さない責任がある」と述べた。
はじめに、被爆者の箕牧氏が「核兵器禁止条約にかける被爆者の願い」として講演。箕牧氏は45年8月7・8日母親と父を探して入市被爆をした。10歳の時死の宣告を受けたことがある。
「核兵器禁止条約発効の意義=宗教者(僧侶・門徒)への期待=」のテーマに沿って、川崎哲氏が講演をした。 禁止条約発効までの歩みや、ICANの活動、被爆者たちの努力に触れながら、「いろんな団体が違いを越えてやった」こととして「ヒバクシャ国際署名」の取り組みを報告した。この「署名」への呼びかけをしてきた川崎氏から、署名の要請・集約に取り組んできた仏教団体に感謝の思いを述べた。
おわりの挨拶で、今回の集会の成功と感謝を、石橋純誓氏(非戦平和を願う真宗門徒の会・代表)が語った。集会を閉じるにあたって、司会の吉崎氏から、カトリック広島司教白浜氏より案内があった「基金」の紹介と協力依頼を述べた。広島別院会場で「基金」への協力依頼のパンフレットを配布した。
「核兵器禁止条約」参加に向けて日本政府への働きかけの決意と、核のない世界を目指す希望に満ちた集会だった。
おわりに
今年は日本国憲法公布75年の節目の年。日本国憲法九条の理念を、世界において具体化をしようとする動きに、仏教徒として主体的に参加する思いを込めて活動をしてきた。「核の傘」に依拠している日本政府は未だ「核抑止論」にしがみついている。川崎哲氏は、「『核の傘』の名の下でアメリカの核兵器使用に協力さえする政策は、武力による威嚇又は武力の行使を『永久に放棄』したはずの憲法九条に抵触しないか」(川崎哲『核兵器を禁止する』P77)と指摘している。
フランシスコ・カトリックローマ教皇が被爆地の長崎・広島訪問のスピーチで、核抑止論を厳しく批判した。仏教界をはじめ諸宗教団体・信徒の「ヒバクシャ国際署名」推進運動に、励ましと共に強い追い風になった。特筆すべきは、立正佼成会の反核・平和運動には目を見張るものがあった。宗教の違いを越えて連帯をめざし、核廃絶の道をすべての人々と手を携えて歩みたい(仏教「慈悲・自利利他」、キリスト教「愛」、儒教の「恕」等の教え)。
「核兵器禁止条約は、人道性に立脚した普遍的規範である。禁止条約を作り出す過程では、倫理や道徳そして宗教が重要な役割を果たした。禁止条約が成立した今日、世界の宗教指導者らは核兵器が悪であるという訴えをさらに強めている。核兵器に手を染めることは反社会的な行為とみなされる」(川崎哲、前書P71)。
釈迦の教えが「法句経」という聖典に載っている。「(実にこの世においては、)怨みに報いるに怨みを以ってしたならば、ついに怨みの息(やむ)ことがない。怨みをすててこそやむ。これは永遠の真理である」と。日本国憲法第九条に通底する内容でもある。
私たち仏教徒、宗教者は、日本政府に対し「核兵器禁止条約」への署名・批准させる働きかけを強めるために、思想・信条、宗教・宗派を越えた連携への一層の努力が問われている。(完)
【参考文献】
・川崎哲『新版・核兵器を禁止するー条約が世界を変える』岩波ブックレット、2018年2月
・サーロー節子・金崎由美『光に向かって這っていけー核なき世界を求めて』、岩波書店、2019年7月
・「中外日報」、2018年11月28日
・「朝日新聞」(記事:宮崎園子)、2021年2月25日