談話 歴史的な南北会談と「板門店宣言」を心から歓迎する

―朝鮮半島の非核化と北東アジアの平和実現へ、合意の具体化と実行

日本宗教者平和協議会事務局長   森 修覚

一、4月27日、板門店で韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長による南北首脳会談がおこなわれた。金委員長が北朝鮮の最高指導者として歴史上初めて軍事境界線を越えて韓国側に足を踏み入れ、両首脳は「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」に署名した。
「板門店宣言」は、「両首脳は、冷戦の産物である長い分断と対決を1日も早く終わらせ、民族的な和解と平和繁栄の新時代を果敢に」開く確固たる意思を表明し、「完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現する」「朝鮮半島の非核化のための国際社会の支持と協力のために積極的に努力する」「(朝鮮戦争の)終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制構築のための南北米3者または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していく」ことなどに合意した。
 日本宗平協は、この歴史的合意を心から歓迎するとともに、朝鮮半島の非核化と北東アジアの平和の実現にむけて、その誠実な履行を希望する。
一、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄をはじめとする朝鮮半島の非核化は、北東アジア地域の平和体制の構築を一体的・包括的に進めることが重要である。
 この点で、板門店宣言が65年間停戦状態のままの朝鮮戦争を今年中に終戦させ平和協定への転換を表明したことは重要である。同時に、「朝鮮半島の非核化」の内容や検証方法、期限などは今後の交渉にかかっている。 交渉に当たっては、2015年の6ケ国協議共同声明で確認された原則が遵守されることを求める。これが守られなかった過去の教訓を踏まえ、粘り強く交渉が進められるよう期待する。
一、日本政府はこの間、北朝鮮との話し合いは「時間の無駄」「対話のための対話は意味がない」と一巻して対話を拒否し、オリンピック後の米韓合同演習についてまで「延期すべきではない」と韓国に圧力をかけた。そして北朝鮮の「脅威」を最大の口実に核兵器禁止条約に背を向け、軍備増強を続けてきた。その誤りはいまや明らかとなっている。
 日本政府は、過去の歴史の朝鮮半島の植民地政策の誤りを認識し、根本的に改め、憲法の平和原則を遵守し、朝鮮半島の非核化実現のために真剣に努力すべきである。また、核兵器禁止条約に署名、批准するなど被爆国としてのイニシアチブを発揮することを強く求める。

安倍改憲を許さず 9条守ろう! 東京・憲法集会に6万人


 憲法記念日の3日、9条改憲阻止、安倍政権退陣を求め全国各地で多彩な行動が取り組まれました。 東京・江東区では6万人(主催者発表)が参加し、「「9条改憲NO! 平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」が開かれ、日本宗平協から森修覚事務局長らが参加しました。 同集会実行委員会の主催で、「総がかり行動実行委員会」「9条改憲NO!全国市民アクション」が共催しました。
 色とりどりの各団体の名を記したのぼりがはためく中、高田健さんは主催者あいさつで、安倍政権下での改憲に反対が世論調査で58%に達していると述べ、安倍政権を私たちの手で倒し、改憲を葬りさろうと訴えました。
 リレートークでは、作家の落合恵子さんは、「嘘つき内閣が嘘に嘘を重ねています」と語り始め、「平和と命と人権のために私たちはここにいます。あらがうことは私たちが生きている証であり、誇りであるともう一度心に刻んでいきましょう」と呼びかけ、一橋大学名誉教授の山内敏弘さんが、「(9条に)自衛隊を明記すれば集団的自衛権の全面容認になる」と厳しく批判しました。
署名が1350万人を突破
 「9条改憲NO!全国市民アクション」の長尾ゆりさん(全労連副議長)は、3000万人を目標にとりくんでいる「全国統一署名」の集約数が4月末で1350万人を突破したことを報告。総がかり行動実行委員会共同代表の福山真劫さんが、草の根から3000万人の署名を集めきるとともに、「野党と連帯してたたかえば、安倍政権を倒すことができる」と行動提起しました。集会後は豊洲コースとお台場コースの2コースに分かれてパレードしました。

生かそう憲法 守ろう9条

 5・3憲法集会in京都
 5月3日、京都市円山野外音楽堂で、「生かそう憲法 守ろう9条 5・3憲法集会in京都」が行われました。冒頭に6野党(立憲民主、民進、共産、社民、緑の党、希望)からそれぞれ来賓挨拶がありましたが、「憲法の平和主義を守る」「安倍政権を許さない」点で一致した意見が出され、参加者からは「野党は共闘!」の声が飛びました。
 続く講演では、池内了さん(名古屋大学名誉教授)が、憲政史上最悪首相の独裁的政治・アベ政治を止めさせる必要性を詳しく解説されました。例えば安倍首相が改憲で導入を目論む緊急事態条項は、国民の権利を奪い内閣に権限を集中するものであり、ナチスの「全権委任法」と同質であることを強調されました。最後に、矛盾から追いつめられている安倍政権に対して、結集して改憲阻止と安倍政権打倒の努力を訴えられました。
 池田香代子さん(ドイツ文学翻訳家)は、「憲法には過去の不正義との闘い」が刻まれていると、戦争と殺戮の反省の上に現行憲法9条があることを説明されました。そして、虚偽を繰り返す「安倍政権の最大の罪は、『言葉を壊した』こと」であると喝破されました。また、安倍首相が言う「自衛隊を憲法に書き込む」ことによって、9条は実質無効になり、それが自衛隊員の命をも危険に曝すことになります。「言葉の破壊」を許さず、分断と排除を拒否し、他者を信じ繋がることで、改憲を阻止しようと訴えられました。
 その後京都府下の様々な団体から憲法アピールがありました。宗教者からは日本キリスト教団の榎本栄次牧師が、「神を信じる者も信じない者も、ともに手を取り合ってファシズムと闘おう」というルイ・アラゴンの言葉を例示して、宗教の違いを超えた平和のための結束を訴えました。朝鮮半島での非核化・和解の動きに対して、平和憲法を守り切ることが、日本から南北の対話・一致を応援することであると訴えられました。また、立命館宇治高校の3年生から、メディアの惑わされず、自分が信じたことを発信して、政治や憲法に積極的に関わっていきたいと、頼もしい発言がありました。
 なお、3000万署名については、京都府の目標は60万で、現在の到達は21万筆でした。これは改憲の発議を止めさせるための署名であり、同時にアベ政治を止めさせるためにも機能するので、5月末の提出後もs集める努力が必要との報告がされました。
 集会参加者は3000人で、その多くが集会後の平和行進にも参加しました。京都宗平協関係者は18名(会員は10名)でした。   (京都宗平協  冨田成美)

共同行動で3000万署名行動ー大阪

 ⒋月21日、大阪宗平協は治安維持法犠牲者国賠同盟大阪府本部のメンバーとともに、四天王寺西門前で、安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名行動を行いました。
 四天王寺では弘法大師の命日(21日)を「お大師さん」正式には「大師会」聖徳太子の命日(22日)「太子会」と呼び、境内に多数の露店が出て、一日中ひっきりなしに訪れる参詣者で賑わいをみせます。
大阪宗平協は「戦争法」反対の署名活動も、この地で行った経験もあり、今回の行動となりました。「森友・加計・公文書の隠蔽など、民意を全く無視し暴走を続ける安倍政治への怒りは強く、こんな内閣に憲法を語る資格はない。」また、「子供や孫、ひ孫に平和な日本を残そう」と道行く人々に訴え署名を呼びかけました。
 安倍改憲に反対する3000万署名は大阪府下で100万筆を超え、5月3日の「おおさか総がかり集会」にむけ新たな飛躍をと取り組まれています。大阪宗平協もこの集会に賛同し参加するとともに、来月も四天王寺前での宣伝署名行動を行う予定です。 (事務局・長田 譲)

毎月憲法署名に取り組んでいます

 鶴岡では、つるおか一学区九条の会が呼びかけ、昨秋より最寄りの生協千石センターで毎月15日11:00~12:00、3千万人署名に取り組んでいます。
 山形県宗平協もつるおか・たがわ九条の会に参画しており、いつも協力しています。
 毎年5月1日のメーデーでは来賓として県宗平協会長が壇上で紹介され、今年は10月22~24日の日本宗教者平和会議の当地開催をアピールしました。(山形・鶴岡 大高敦子)

〝非国民〟とは誰か? ①    

池住 義憲
絶対的権力は絶対腐敗する
「権力は腐敗する。絶対的権力は、絶対に腐敗する(Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely)」。これは今から約130年前、英国の歴史家ジョン・アクトン卿(1834~1902年)の言葉です。権力が集中し、一元化されれば民主主義が崩壊する。立憲主義が崩壊する。自由主義の息の根が止められる。歴史の事実を事実として学ぶ中から発せられた格言です。
 そうならないように、そうさせないように、私たちは権力を分散させています。立法権と行政権と司法権を分け、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関を置いています。互いに抑制しチェックし合い、バランスを保つことによって権力の濫用を防ぐ。国民(憲法が保障する基本的権利を享有するすべての人、以下同じ)の権利と自由を保障するためにです。
立憲主義のルーツ
 私は、昨年5月、英国へ行ってきました。近世民主主義・立憲主義のルーツを訪ね、歴史を歩き、「いま」の日本社会を外から改めて振り返るためにです。とくに「法の支配」という近世の立憲主義の出発点となっている1215年の英国マグナ・カルタ(大憲章)について学んできました。
 当時、英国のジョン国王はフランスに出兵するため、諸侯や都市上層市民らに、莫大な軍役を賦課していました。それに対して封建諸侯と都市代表市民は、王権を乱用するジョン国王に抵抗。国王の徴税権の制限、不当な逮捕の禁止、教会の自由、都市の自由などを認めさせる確約文書を突き付け、国王に署名させました。これが、マグナ・カルタです。
 国王といえども、法の下にある。国王といえども、それぞれの地方における伝統や慣習・先例に基づいて発達した法(コモン・ロー)の下にある。国王はそれを尊重する義務を負う。そのため、国王の権限は制限される。のちの基本的人権と立憲君主制を理念とする英国憲法を構成する重要文書となりました。
 こうしたことを、文書で確認した意味は大きい。国王の権力を法で縛り、権力行使も正当な法的手続きを踏まなければならない。これが、現代の「法の支配」の原型です。マグナ・カルタが立憲主義の出発点、と言われるゆえんです。
権力掌握のはじまり
 昨年4月の朝日新聞オピニオン&フォーラムに、目が止まりました。『ポピュリズムの行方』と題して、ドイツ歴史家マグヌス・ブレヒトケンさん(ミュンヘンの現代史研究所副所長、53歳)のインタビュー記事が掲載されていました。
 ヒトラーが全権力を掌握した1933年1月に宣言した「緊急条項」は、当時のワイマール憲法48条(憲法停止の非常大権)に基づいた“合法的”手法によるものでした。インタビュー記事のなかでブレヒトケンさんは、「憲法に何が書かれていても、権力者のやりたいことができる。憲法に、憲法を棚に上げる規定があったのです。それをヒトラーが利用した」と述べています。
 ヒトラーの全権力掌握から80年経った2012年4月、自民党は「日本国憲法改正草案」を発表。草案第九章には、次のように「緊急事態」条項案を盛り込みました。
 (緊急事態の宣言)
 第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
 そして第99条で、「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」と続けています。
 緊急宣言が発せられた場合、すべての人はその指示に従わなければならない、としています。時代状況は異なるものの、こうした内容はヒトラーが利用したものと同じです。両者に共通するのは、「憲法に、憲法を棚上げできる規定」が組み込まれていることです。(つづく)

※池住義憲氏には09年日本宗教者平和会議in金沢で記念講演をいただきました。元立教大学大学院 特任教授、現在も活躍中。池住通信から転載させていただきました。

山家妄想  明治維新一五〇年記念と福沢諭吉

★今年、八〇歳台の半ばに至った私の生涯初めの一三年間は、対中国侵略戦争から太平洋戦争のさ中であった。そしてそれは一八七四年台湾征討に始まり日清戦争・日露戦争の結果としての朝鮮植民地化、傀儡満州国建国という明治以来の「日本の強み」の帰結だったのである。この期間、私は「大日本帝国の立派な軍人になる」以外の未来を描くことは知らなかった。
★一九四五年八月一五日、「玉音放送」に呆然自失しながらも、軍人以外の未来を探ることを許された喜びの実感が、徐々に拡がってきた。翌年進学した旧制中学から学制改革を経ての新制高校と合わせて六年間の学校生活は、戦争協力を羞じる教師と見事に変身し新しい支配者・占領軍へすり寄る教師の姿を目の当たりにした得難い経験の下で、学校の主人公は生徒であるという教育本来の民主的学校生活・自治を経験したのであった。この間、戦争を引き起こしたものに対する責任追及と自らの戦争加担・協力の反省を欠きながらも、戦争の惨禍を再び繰り返さないという決意が日本国民のおおかたのものとなった。そして、それは大日本帝国憲法を否定して新しい日本国憲法を制定することに結実した。たとえその原案が日本を占領していた連合国総司令部から提示されたものであったにせよ、帝国議会の審議を経て日本国民自らが制定したものであることは否定できない事実である。
★しかし、一旦は「公職追放」された戦争の責めを負うべき者たちは、東西冷戦という日本を取り巻く国際情勢の変化によって、日本を極東の防波堤とするというかつての敵国であり占領者でもあるアメリカの戦略から「追放解除」され権力の座に復帰する。そして、「大東亜戦争」開戦した東条英機内閣の商工大臣で中国人強制連行の最高責任者でありながら、一旦はA級戦犯容疑者として巣鴨に拘置されながらもなぜか釈放され、ついには総理大臣に登りつめた岸信介を母方の祖父とする安倍晋三が、いま政権の座にある。彼は日本国憲法を破壊し、大日本帝国憲法体制への回帰を「祖父の悲願」と考え「凡庸な人物(中野晃一氏評)」故の権力をほしいままにする策動を続けている。彼に帰結した戦後日本の保守(反動)勢力はアメリカとの同盟=日米安保条約を背に、夢よ再びと周到に戦前回帰の計画を進めてきて現在に至ったのである。この現在を「明治維新の精神」を援用して合理化し、日本を再び海外でアメリカとともに戦争する国にせんとする企みの一つが今回の明治一五〇年記念事業の本質なのだ。★ところで、維新以来のオピニオンリーダーで、実はアメリカ リンカーン大統領の言葉の引用だが、その著「学問のすすめ」冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の語で、あたかも民主主義を先導したかのごとく喧伝され、日本銀行券に肖像が使われている福沢諭吉の実像が如何なるものであるかを示す著作がある。杉田聡著『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社刊)である。第1章ヨーロッパの帝国主義イデオロギーから始めて、第2章 福沢諭吉の帝国主義イデオロギー 第3章福沢の帝国主義イデオロギーの行きつく先―国内的体制と国権拡張の諸段階と、福沢諭吉著作の、ほんの一片の語句に惑わされることなく、膨大な全集(著作と「時事新報」に発表された評論など)を渉猟し諭吉自身の言葉で彼の本質を明らかにしている。★暴露されているのは人権を擁護し自由を何よりも大切にする民主主義本来の対極にある彼の実像である。彼は欧米における本来のそれよりも、より徹底した「帝国主義イデオローグ」なのであり、国内では人権を抑圧し富裕者に奉仕する徹底した差別主義者、対外的には朝鮮・中国を蔑視して、その植民地化を日本の当然の使命と主張する。★第4章は現代の危機と福沢の帝国主義イデオロギーである。ここで著者は「現代の危機」を論ずる。現代の危機とは安倍晋三を総裁とする自民党とその政権の策動である。その策動がこの諭吉の実像に導かれていることを私たちは知る必要があるのである。安倍内閣の背後には神道と結びつき草の根からの改憲活動を展開している日本会議が存在する。日本会議の理論的エネルギー供給源こそが福沢諭吉なのである。明治の「帝国主義デマゴーグ」は現代における「帝国主義デマゴーグ」の黒子でもあるのだ。わたしたちは現在の日本の危機的現状を認識して破局にいたることを何としても防ぐ必要がある。 (2018・4・13
水田全一・妙心寺派の一老僧