核兵器禁止条約締結の国連会議に参加して


日本宗教者平和協議会事務局長  森 修覚

 6月15日から7月7日まで開かれる国連会議第2会期の傍聴と要請のニューヨーク行動に15日から20日まで参加しました。
 16日の国連会議傍聴の前に国連本部前の「イザヤの壁」での原爆犠牲者への追悼の祈りを行いました。
 その後、国連本部会議室で傍聴をしました。当日は条約の前文部分の論議が各国から発言され、賛同の意を表明しつつ、建設的意見が述べられました。特に核の抑止は威嚇行為に当たり、禁止すべきとの提案は、核の傘の国に影響を与えることになると聞きました。
 午前の会議終了後に和田征子日本被団協事務局次長(長崎で被爆)がホワイト議長へ「ヒバクシャ国際署名」の296余万署名の目録を渡しました。
 その後、SEIU1199支部にて代表団会議が行われ、セルジオ・ドォアルテ元国連軍縮問題上級代表による講演で核兵器禁止条約の画期的意義などについて認識を深めました。
 ドゥアルテ氏は、国連総会第 1 号決議など国連が設立当初から「核兵器のない世界」 の実現をめざしてきたことなど、国際社会における核軍縮の歴史について触れました。
 今回の禁止条約の意義として、核兵器使用がもたらす残虐性や非人道性の見地から 法的な禁止を実現し、廃絶にむけた道筋をつけるものであること、核不拡散条約(NPT) 第6条に定められた核軍備撤廃のための誠実交渉義務を実現するためのものであると強調しました。
 17日は午前中は署名行動を行いました。私たちはタイムズスクエアで行いました。
 午後は「核兵器を禁止する女性行進」がニューヨークで行われ約1000人が参加しました。行進は豪雨のなか、マンハッタン中心部のブライアント公園から国連本部近くのハマショールド広場までの2キロを元気いっぱい歩きました。
 私と小島寛師は、「グラニー・ピース・ブリゲイド」(おばあちゃんの平和旅団)の代表のニディア・リーフさんと一緒に歩きました。京都宗平協の冨田成美さんと交流のある方です。
 18日は、午後から国連会議連帯のフォーラムに参加しました。「一つたたかい、多くの戦線:核兵器、戦争、壁、温暖化ノーを」がテーマでNGO「平和と地球」が主催し、日本原水協、日本原水禁の代表も参加しました。日本からの発言は日本被団協代表理事の箕牧智之さんが被爆体験を話し、被爆三世の弘中孝江さんが、「条約ができれば各国政府に批准を求める運動を」と、日本原水協代表理事の高草木博さんは、「核兵器がもたらす非人道性を訴え、日本を変えたい」と述べました。
 8月の世界大会では核兵器禁止条約の採決の結果を踏まえた歴史的な大会が期待されます。
 代表派遣の募金のご協力に感謝申し上げます。

日本宗教者平和協議会2017年度運動方針(続き)

(4)沖縄県民と連帯し、辺野古  新基地建設を許さないために
 昨年1月、沖縄県で「辺野古新基地を造らせない島ぐるみ宗教者の会(略称・島ぐるみ宗教者の会)」が広範な宗教者によって結成されました。憲法9条にふさわしい安全保障政策を実現していくためには、まず率先して沖縄の米軍基地の撤去・削減を考えなければなりません。
 日本宗平協は昨年の全国理事会を沖縄で開催し、「島ぐるみ宗教者の会」などの運動と連帯し、「オール沖縄」のたたかいを「オールジャパン」のたたかいに広げるための力を尽くす決意を新たにしました。
 また、今年の3・1ビキニデーの宗教者平和運動交流集会に辺野古・「平和丸」船長の相馬由里さんにたたかいの報告を受け、支援の取り組みの決意を新たにしました。
 沖縄県の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地をめぐっては米海兵隊の海外侵攻、「殴り込み」作戦のための一大出撃拠点として飛躍的に強化されることを示すさまざまな計画が判明しています。政府は、辺野古新基地建設を完全に断念し、普天間基地は「移設」条件なしの閉鎖・撤去を決断すべきです。
 沖縄防衛局は、前県知事が出した辺野古埋め立てに必要な岩礁破壊破砕許可が3月末で期限切れなのにもかかわらず、これまでの解釈を180度変更し、「更新は不要」として工事を続けています。
 沖縄が受けている痛みや苦しみ、そして恐怖がいかばかりのものかを「想像」すべき時ではないでしょうか。米軍が土地を強制接収して基地を造った歴史を出発点に、現在も極めて過重な基地負担を強いられており、「辺野古新基地建設は決して容認できない」との決意を支える運動と世論を全国でいっそう強める時です。
 高江や辺野古のたたかいとむすんで、全国各地の基地被害根絶と米軍人・軍属の犯罪の土壌となっている日米地位協定の抜本改定などの取り組みをひろげます。
 日本宗平協はこの間、沖縄各地で「平和の鐘」を打ち鳴らし、祈りと連帯の行動をひろげてきました。引き続き、地元沖縄の宗教者・県民とともに、辺野古の海の埋め立て工事強行を許さず、新基地建設反対の支援を進めていきます。

(5)原発ゼロ、環境を守るために
 生きとし生けるもののいのちと、かけがえのない地球をまもり、原発に依存しない社会を目指していくことは不可欠です。大きな犠牲をもたらした東日本大震災から6年。東京電力福島第1原発の重大事故はいまだに収束せず、住民の避難生活も続いています。
 安倍内閣は、原発被害者を愚弄し、福島の重大事故を引き起こした責任の重さを消し去り、ふたたび「安全神話」をまき散らし、原発にしがみつき、推進する姿勢をあらわにしています。
 国は、原発事故によって放射線の影響や地域社会の再建がすすまないなかで、帰りたくても帰れない自主避難者に対する住宅の無償提供を3月末で打ち切りました。
 震災復興の陣頭に立つべき今村雅弘復興相は、自主避難者の帰還について「どうするかは本人の判断」と発言し、何ら落ち度のない自主避難者にたいし、東京電力と国の事故に対する責任を転嫁する「自己責任」との暴論をくり返すなど、復興相にあるまじき態度を示しています。
 復興相の辞任、安倍政権の任命責任を厳しく問うとともに、被害者支援打ち切りの姿勢を怒りをもって糾弾するものです。
 政府・東電は避難指示解除とあわせて賠償などを打ち切り、「原発事故幕引き」をすすめています。政府は避難指示を3月末で福島県浪江町、飯館村、川俣町山木屋地区で、4月1日には富岡町で解除しました。
 東京電力福島第1原発事故から5年を迎えた昨年2月、国や東電による被害者の切り捨てと分断を押し返し、手を携え、連帯して被害者救済を勝ち取ろうと「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」を結成しました。
 「原発避難集団訴訟」の群馬訴訟で前橋地裁は3月17日、国と東電の責任をみとめ賠償支払いを認めたうえで、原告となった自主避難者の多くについて避難と避難継続の合理性を認める判決を言い渡しました。生業訴訟(中島孝原告団長)の判決は今年10月に予定されています。  「ふるさとをかえせ・福島原発避難者訴訟」(早川篤雄原告団長)、「原発事故被害いわき市民訴訟」(伊東達也原告団長)など、国と東電の法的責任を徹底的に追及し、原状回復と完全賠償を求め、国など行政に被害者救済策を要求するなど、原発事故のために不条理にも平穏な生活を突然断ち切られ、なれ親しんだ生活空間から切り離された被災者に寄り添い、住民訴訟支援に取り組みます。
 安倍政権のもと、原子力規制委員会はすでに12原発が規制基準に適合したとの判断を示しています。東電福島第1原発事故の反省を踏まえて策定したとする新基準ですが、事故の究明さえ道半ばにすぎないなかで、日本の規制基準を「世界最高水準」と呼ぶなど、またもや「安全神話」を復活させています。こうしたなかで、国や電力会社は、国民の意見を聞くことなく、四国電力の伊方原発、九州電力の川内原発、玄海原発などの再稼働をすすめています。
 使用済み核燃料から取り出されるプルトニウムは核兵器の材料になる物質です。日本はすでに約48トンの分離プルトニウムを国内外に保有しています。安倍政権は昨年10月、使用済み核燃料の再処理を着実に実施するための認可法人使用済燃料再処理機構を発足させ、核燃料サイクル政策に固執し、国民の負担のもと再処理事業の恒久化を図ろうとしています。
 政府は、プルトニウムを消費するため、通常の原発、軽水炉でプルトニウム、ウラン酸化物(MOX)燃料を利用するプルサーマルをすすめると表明しています。
 震度7に2回も見舞われ、熊本・大分両県に大きな被害をもたらした熊本地震発生から1年余が経過しました。全国で2000以上の活断層が確認されている日本では、いつどこでも直下型地震がおこる可能性があります。原発の再稼動をしゃにむに急ぐのは横暴の極みであり、必要性もない原発の再稼動は直ちに中止すべきです。
 この間6回にわたって継続して取り組まれてきた「いのりのつどい」の開催に引き続き協力するなど、東日本大震災・原発事故被災地を訪れ、それぞれの宗教・宗派による「祈り」を行い、被災地の人びととともに原発ゼロを願う活動を継続していきます。
 「核兵器とも原発とも人類は共存できない」は宗教者としての基本的命題であり、原発廃止・再稼動反対を、原発被害者支援活動と併せて主要課題として取り組んでいきます。

(6)個人の尊厳、人権擁護、格差是正
 強者・政治権力の「弱者」に対するおごりや切り捨てがあふれています。 憲法は法の下での平等を定めています。女性、子ども、高齢者など弱者や少数派の権利と尊厳を守り擁護します。
 朝鮮半島の植民地支配による加害と被害にたいする宗教教団の戦争責任を絶えず問いつづけなければなりません。2015年12月、日本軍「慰安婦」問題について日韓外相合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認しましたが、歴史はなかったことにできません。 戦争の過ちを直視し、「記憶」を保持しつづけ、語り継ぐ「継承」の責務が人類にはあります。朝鮮人強制連行・強制労働とそれに伴う広島・長崎での被爆死を生んだ歴史などを想起し、こうした問題を記憶に留め、伝えつづけることこそが未来への展望を開くことになります。戦争責任への視点を決して曇らせてはなりません。
 天皇の退位が議論されています。政府は、天皇が退位し、皇太子が新天皇に即位する際に「即位の礼」とは別に退位に伴う儀式を執り行う方向で検討をすすめられていると報じられています。天皇の儀式など無用な虚礼に税金をつぎ込み、皇室の荘厳な儀式を利用し、それを通じて国民統合を図ろうとするなど天皇のセレモニーを政治的利用するいかなる動きも許されません。
 議員立法による「家庭教育支援法案」が国会に提出されようとしています。この法案は、推進議員連盟(初代会長・安倍晋三首相)が立法化をめざしてきたもので、国や教育行政が家庭のあり方を枠にはめ、家庭教育というプライベートな領域に国が介入し統制しようとするもので見過ごすことはできません。
 引き続き、日本会議や統一協会の動向に注視していかなけれなりません。
 憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とありますが、安倍政権は「助け合い」などの美名のもとに、公的責任を後退・曖昧化させ、国民に保障されているはずの社会保障の権利を否定する医療・福祉の改悪を推し進めています。
 国民生活や環境を守るために設けられた諸規制を、多国籍企業の飽くなき利益追求のために便宜を与えるために廃止、緩和し、経済主権を侵害し、雇用の喪失や格差の拡大を招くことが懸念されます。
 安倍政権は、米国の要求に沿う形で軍事費を国内総生産(GDP)比1%以内に抑える考えはないと表明(3月2日)し、自民党は、日米同盟の「一層の向上」のため日本が「敵基地反撃能力」の保有の検討を開始するよう求める提言を出すなど、軍拡の暴走をつづけようとしています。巨額の軍事費負担、軍拡路線を突きすすむほど、アジアを舞台に軍事的緊張を増すことになります。
 2017年度予算に計上された軍事費(防衛関係費)は2年連続で5兆円を超え。在日米軍再編経費や在日米軍駐留経費の「思いやり予算」も増額・恒久化しています。
 安倍政権は、米国製のF35ステルス戦闘機など高額兵器の購入について、「結果として米国の経済や雇用にも貢献する」(2月15日)とまで表明しています。
 格差を是正し、環境を守り、持続可能な経済発展を求める声を宗教者の立場から声をあげます。

Ⅲ 宗教者の平和の願いを総結集する日本宗平協の組織の充実・発展を
① 日本宗平協の特質
 日本宗平協の特質は、多様な宗教が活動する日本の宗教事情に照応し、宗教の違いをこえて①全国に加盟組織と会員を持った恒常的運動体であり、②統一した方針のもとに活動し、③同一機関紙で結ばれ、④独立した財政基盤を持ち、⑤日本の平和と民主主義のために自主的自覚的に運動している諸団体と連携し、⑥国際連帯を追求する、という他に例を見ない宗教者の平和運動組織です。

② 4大取り組みを結節点とする  活動への取り組み
 3・1ビキニデー久保山愛吉墓前祭、全国理事会、原水爆禁止世界大会、宗教者平和会議の4大取り組みを結節点とする運動に全力で取り組みます。これらの取り組みを成功させるためにも、任務にふさわしい体制を取り、常任理事会・事務局会議などを有効に機能させます。

③ 全国理事会の開催と充実
 全国理事会は、日本宗平協の最高議決機関で、この間の活動を振り返り、情勢を踏まえた新年度の活動方針や人事などが決定されます。
 名実ともに最高議決機関となるためには、前年の全国理事会で選出された理事ほか役員はもとより、各地や各宗教・各宗派で新たな役員になる可能性のある会員の人選や、文書発言も含めて広く参加できるような体制の構築に引き続き工夫が必要です。日本宗平協の諸活動において、絶えず全国理事会決議に照らし合わせて具現化を図ります。人事も、この決定を実践する先頭に立つ役員であり、それぞれが責任を分担し役割を果たすことが期待されます。

④ 地域宗平協の拡充、各宗教・宗派(教団)での協働
 日本宗平協に参加する各地域宗平協や、宗教・宗派別の宗教者平和運動団体()は、それぞれの特徴を生かした活動を展開し、日本宗平協の活動を豊かに発展させると共に、そこで培った成果を日本宗平協に結集します。地域宗平協においては、各地域において積み上げて来た実践の充実や地域間での交流も含めて日本宗平協の活動への協力・共同の一層の推進を期します。そのためにも、積極的にブロック毎の交流をはかります。
 また、それぞれの宗教・宗派における平和の会などの組織(日本キリスト者平和の会・立正平和の会・真宗平和の会・天理教平和の会・日本友和会など)をも同様に活動の前進をはかり、宗教者からの平和活動の発信に努力します。

⑤ 平和と民主主義の確立を願う諸団体との連帯
 世界平和・立憲主義の危機・いのちと地球環境への破壊など平和と民主主義が脅かされる状況を打開していくために、こうした取り組みを日本原水協、原水爆禁止世界大会実行委員会、非核の政府を求める会、全国革新懇、憲法改悪阻止各界連絡会議などに参加し、連帯して平和活動を推進します。
 また「埼玉宗教者・市民懇談会」主催で宗教者と市民が共同で、「沖縄のための祈り」(15年)や「平和のための諸宗教による祈りのつどい」(16年)などを開催してきました。これらの取り組みをさらに発展させるとともに、各地の「九条の会」などとも連携し、平和憲法を護る実践をすすめます。

⑥ 機関紙『宗教と平和』の充実
 日本宗平協の諸活動の報告・伝達、各地の活動を反映させることに力を注ぎ、機関紙『宗教と平和』の充実、それを可能とする編集体制の確立・強化に努めます。また、各地域宗平協・各宗教平和の会などとの連携を深め、編集協力の広がりを期します。創立時の発刊から幾多の苦労・変遷を経て2010年には500号を達成し、ことし創立55周年を迎え、日本の宗教者の良心を代表し、歴史の証言者としての役割を継続すべく、内容の充実を期して取り組みます。

⑦ 活動とそれを支える財政基盤の確立・強化
 以上の報告・方針に照らして、日本宗平協に期待されている活動は大変大きなものがあります。空白地域の宗平協の結成・促進に努めると共に、加盟各団体・各地宗平協においても、会員読者の拡大に格段の努力を得られるように呼びかけます。
 日本宗平協の諸活動実践への展望は、その活動を支える財政基盤が保障されなければ活動自体の継続が困難な状況を迎えます。4大取り組みへの諸準備と実践、恒常的な活動の維持などを支える財源は、会員・読者の活動に負うところが大きく、機関紙発行の財源や平和活動への支援など大変厳しい状況にあることは否めません。
 財政基盤の確立・強化は、各地域宗平協などの会費納入時期の協力、寺院・教会などにおいて信者のみなさんへ宣伝・普及の活動などを含めて機関紙発行部数の拡大などにご協力いただき、課題達成へ向けて引き続き努力します。

関電前で断食   中嶌哲演師

若狭の仏教者として


 福井県小浜市の明通寺住職・中島哲演師は、ますます過酷・深刻化している「フクシマ」の被災者に心を寄せ、その抜本的で包括的な救済を願い、また、若狭に「第二のフクシマ」を断じてくり返させないことを願って、関西電力本店前で5月15日から17日までの3日間、福井県庁ロビーで同18日・19両日、断食を決行しました。
 断食声明「あとからくる者のために」で中嶌師は、関電が高浜原発3、4号機の起動の断念、大宝(701年)と天正(1586年)の大地震・津波に関連して高浜・大飯原発近傍と海面下を公明正大に調査・検証すること、広範な市民のみなさんが「一食断食」「一日断食」などで、再稼働反対を表明し、その食費を反対運動資金に振り込んでいただくことを呼びかけました。
 中嶌師は、高浜原発をはじめすべての原発の再稼働に反対する根本的な理由として、第1に、再稼働よりも福島原発被災者の全面的救済、原因究明と後始末こそ最優先すべきであり、第2に、1基の原発が1年間稼働するだけで広島型原爆1000発分の「死の灰」を生成・蓄積せざるを得ないからであり、第3に麻薬的原発マネーにより国内植民地化された「立地(集中)地元」の過去と現在から目をそらし、もっともらしい個別の安全論議に終始しているからであり、第4に、わが地震列島が動乱周期に突入しているからと指摘し、積年の若狭の一仏教者としての想いをふまえて訴えます、と坂村真民氏の『詩集・詩国』の一説、「…あとからくる者のために/山を川を海を/きれいにしておくのだ/あとからくる者のために/みなそれぞれの力を傾けるのだ/あとから続いてくる/あの可愛い者たちのために/未来を受け継ぐ者たちのために/みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ」を引用し、「私も遅ればせながら初孫をさずかりました。爺馬鹿(じじばか)としても、その初孫とすべての子どもたちに、せめてもの贈りものをしたいのです」と述べています。
 20日には、「今回あえて関西電力本店前を選び、3日間の断食を決行しましたのは、原発電力の『消費地元』の市民のみなさんに、たとえ一食断食で少しひもじい思いをしてでも、これまでの生活の有り様をふりかえり、子どもたちや孫たちが安心して暮らせる未来のためにも、再稼働を許してよいのかを問いかけたかったからでもあります」との声明「断食を終えるにあたって」を発表しました。

山家妄想  諫言のひとつもいえないのか


★「共謀罪」を罰する法律が強行成立させられた。内心の自由を侵し罰する、戦前の治安維持法の再来という意見や、行われた犯罪行為でなく準備以前の共謀を罰するという現行の刑法体系を覆すものという批判に、耳を傾けることなく、維新を追随させて自・公は強行したのである。そのやり方たるや参議院での委員会審議が20時間にも満たない中で、法案の採決もせず「中間報告」を本会議で求めて、即座に本会議採決に持ち込むという奇策をとったのである。採決にあたっては野党の牛歩戦術に対し、投票箱の閉鎖まで強行した。
★議会制民主主義先進国・イギリスでは牛歩や長時間の反対演説は少数野党のとる戦術として是認されていたことを、私は歴史の授業のなかで教えられてきた。議会はあくまでも言論を戦わせて、是は是・非は非と互いに認め合いより高いレベルでの意思統一を図る場であるとされてきたのである。人間の理性を信じ誠実な人間性を認め合って、ともに住む社会・わが国家の発展のために協同する場であったのである。★ところが現在の日本政府=安倍内閣には、この姿勢は微塵も窺われない。傍若無人・問答無用と独断専行する。秘密保護法・安保法制、そして今回の「共謀法」と、中継される国会審議のありさまは、野党の質問に対する答弁には誠実さのかけらもなかった。答弁に立つ担当大臣は金田法相を筆頭にして、大臣の資質はおろか満足な義務教育も受けているのかと疑われる者ばかりである。もつとも自民党内で当選回数順に大臣を割り振っていけば、担当部署を担う資質などは考慮できないのかもしれぬ。数少ない女性をちりばめようとすれば容姿優先(例外はあるが)となろう。
★圧倒的多数の1・2期議員は採決の要員としては貴重な存在だが、それだけの資質である。彼等は民意を正確に反映しない小選挙区制と「七光り」で、その位置を占めているだけの存在である。政党助成金の配分権を握る党執行部はかれらを金縛りにする。安倍一強の舞台裏である。強力な権力を握っても、その権力が彼らの言う「公共の福祉」や「国益」のために行使されるのであれば、まだ我慢できるかもしれない。
★蕎麦屋のメニューではないが「モリ」と「カケ」が露わになって、権力が私利私欲のために行使されているのではないかという疑惑が明らかになった。「モリ」では「忖度」による利益供与が明らかになり、10億円近い国民の財産が歴史修正主義教育を行っている私学経営者に渡されようとし、「カケ」では、その規模150億近くの県民や市民の財産が、「総理のご意向」で「腹心の友」に便宜をはかり渡されようとしていることが明らかになりつつある。いずれの場合にも、国家公務員を秘書宜しく身辺に侍らせた「私人」と強弁する総理夫人が「名誉○長」を関連教育施設で勤めている。私物化は夫婦同伴である。
★問題は各界より批判の挙がるこの事態に、一部の教団を除いて仏教界からの批判の声が聞こえないことである。治安維持法下の戦前において、戦争に向かう大勢に抗うことひとつできずに、人殺しに協力・加担した歴史を繰り返すかのごときである。
★今年は臨済宗中興の祖とも言われる白隠慧鶴禅師の250年遠忌にあたり、わが教団でも記念行事を行っている。禅師には漢文での語録と並んで「辺鄙以知吾(へびいちご)」をはじめとする仮名法語がある。84年の生涯は江戸幕府の完成期から矛盾が表面化する時期にあたるが、松蔭寺という貧寺に住職して常に民衆の視点で社会を眺め、権力にも臆するところなく発言をされた。幕府の大名統制の要ともいえる参勤交代制についても、忌憚のない発言がなされており、著書は発禁になったほどである。
★さきに安倍首相は東京の某禅寺で坐禅を組むと報道されたが、その坐禅は形ばかりのものなのか。「行住坐臥に脚下を照顧する」底のものではないのか。また坐禅指導の「老師」は権力の座に胡座をかいているとしか見えぬ弟子に直言し、警策を振う力量を備えておらぬのか。白隠禅師は「動中の工夫は静中に勝る事百千億倍」と日常行動の中に仏道を実践することを教えられた。私たちの教祖や歴代祖師から受け継いでいるはずの「宗教力」が、今ほど試されている時はないと思えるのである。

(2017・6・16)  水田全一・妙心寺派の一老僧