沖縄のたたかいと連帯し全国理事会開く

 2016年度日本宗平協全国理事会は、5月23日から名護市で開催しました。 昨年の早い時点で沖縄開催を決定し、沖縄全土からの基地撤廃、辺野古に新基地を建設させないために、地元沖縄の人々のたたかいに学び、連帯して行動する三日間の日程を組みました。
 初日は、名護市内にて全国拡大理事会が開かれ、北は北海道から、そして地元沖縄からも多数の参加者を得て40人が集いました。
 荒川庸生理事長の開会挨拶に続き、議長には長田譲常任理事が選出されました。本年度の活動方針・財政運営等、事前に配布された議案をもとに、森修覚事務局長から説明報告の提案に対し、各参加者からの質疑・意見が展開されました。
 そして今回は、沖縄開催における特別報告として、北上田毅氏(抗議船船長・沖縄平和市民連絡会)の辺野古訴訟「和解」の評価の報告がありました。北上田氏は、まず今回の沖縄元米軍兵による女性殺害事件にふれ、沖縄の怒りはもう限界を越えていることを訴えました。過去における米軍・軍属による凶悪事件のリストを表示し、沖縄での被害状況が一向に改善されない現実。そして、全国の米軍基地の74パーセントをこの沖縄が占めている現状とともに、基地撤廃に向けた沖縄の人々の声を日米両政府に向けて発信することの必要性を述べました。そして、何よりもこの沖縄のたたかいは軍事基地撤廃を目指す日本全国のたたかいでなくてはならないことを痛感しました。
 小野和典事務局次長から今回のアピールの提案があり採択されました。(別掲)そして、大原光夫副理事長が、この「宗教サミット」を成功させるべく、一人ひとりが共に力を出し合い平和の原動力を推進していくことを呼びかけ閉会しました。
 二日目(24日)は、本部港からフェリーで伊江島に向かい、名嘉實伊江島村議のガイドにて島内各地を巡りました。私たちの目に入って来るのは、随所で米海兵隊(UMC)の基地提供とされている実態。またそのためには、戦後1950年代に、住む家を焼かれ、伊江島島民の筆舌に尽くせぬ強制立ち退きを余儀なくされた歴史が存在していることを見逃してはなりません。
 UMCの基地面積は、伊江島全島で801ヘクタール、その内42%が境界フェンスと滑走路・飛行場という実態。私たちのバスの目前にも高く長いフェンスの壁がどこまでも続きます。辺野古の「和解」工事中止以後、新たな動きとして、伊江島・高江に新たな基地拡張の動きが顕著になってきたことも前日の会議の中で報告されましたが、まさにこの伊江島を実際に巡る中で見聞することができました。
 車窓から至るところに見える亜熱帯植物の豊かな自然と、延々と続く米軍基地とのアンバランスが参加者の目に焼き付けられました。断崖絶壁の景勝地には、ガマが存在します。数々の悲劇を聞かされた事実に、改めて、真実が伝えられない戦争の実態に驚かされます。
 バスで立ち寄った「農民道場」(「団結道場」)『米軍に告ぐ 演習地を直ちに撤去せよ』の文字が畑の中にくっきりと見えました。
 その後立ち寄った『命どぅ宝の家』では、謝花悦子さんから、徹底した非暴力で米軍・日本政府とたたかい、2002年、百一歳で亡くなった阿波根昌鴻さんの活動について話を聞きました。断食・座り込み・「乞食行進」…「あの手この手で抵抗し続けた」(謝花さん談)クリスチャンとしての阿波根さんの足跡が紹介されました。『平和の最大の敵は無関心である』『戦争の最大の敵もまた無関心である』『みんなで反対すれば戦争はやめさせられる』(阿波根昌鴻)そして、『地の上に基地なかの日夢の春』(同氏)の実現こそ、時代をつなぐ私たちの使命ではないかと実感しました。
 伊江島巡りの最終は、島を一望できる標高172メートルの「城山」への登山。難コースのため、全員の参加は無理でしたが、頂上からは眼下の基地が見え、改めて、「土地問題は伊江島から始まった」(謝花談)の言がよみがえり、同時に、バス車内ガイドの名嘉さんから説明のあったUMC(米海兵隊)の物資輸送供給訓練(パラシュート訓練)中の様子が、肉眼で山頂から確認できました。
 最終日、三日目(25日)の行動は、沖縄の人たちと連帯しての抗議行動への参加です。まず参加者を二班に分け、辺野古の海での船上行動と、同時刻に展開しているキャンプ・シュワブゲート前での抗議行動にローテーションを組んで参加しました。
 辺野古の海では、船長の仲本さんのかじ取りで船出、沖に出て船の上から「祈りの行動」を行いました。キリスト教のメッセージ、天理教のお勤め、神道の祝詞(のりと)、仏教各宗派の表白・勤行が続きました。時折、海保からの「退去アナウンス」が湾内に流れましたが、「和解」以前の様な「暴力的言動」はありませんでした。梅雨下の沖縄で、荒天も予想されましたが、活動時には雨が止み、晴れ間も覗き、波も静かで、大浦湾に平和の祈りを響かせることができました。
 キャンプシュワブのゲート前には、連日に地元沖縄を中心に、基地建設反対・元米軍兵事件抗議の団体・個人が集結しました。UMCの大型車両搬入の度に大きな抗議の声を届けました。
 ◎「もう限界だ、がまんの限界だ!」(初日の全国理事会中の発言)
 ◎「今までだまされ続けてきた沖縄県民の正直な気持ちは、『もう何も信用できない』…『徹底究明』? 『再発防止』?」(「命どぅ宝」の家で)
 ◎「出ていけ米軍! ここは私たちの沖縄だ!」(キャンプ・シュワブゲート前で涙ながらに拳をあげて叫んでいた女性)
 現地の人々の切なる声を背負い、私たちは急きょ予定を変更して、「女性遺体遺棄」事件を受けて嘉手納空軍基地前までバスを進めました。3千人~4千人規模の抗議集会が予定されている中で、嘉手納基地に向かい、辺野古同様各宗教毎に平和の祈りを展開し、3日間の沖縄での平和行動を終えました。(編集部)

アピール 「戦争法」廃止、米軍基地撤去、辺野古新基地建設阻止に向けて

 またしてもここ沖縄は、米軍基地あるが故の悲劇の怒りと悲しみの渦につつまれています。
 私たち宗教者は、未来ある尊い命が無慈悲に奪われた今回の元米海兵隊員による許しがたい事件に満身の怒りをこめて強く抗議するものです。
 米兵による沖縄の悲劇を、これ以上絶対にくり返させるわけにはいきません。日米両政府に、「綱紀粛正」や「再発防止」という何の効果もない、破たん済みの空しい言葉の対応ではなく、自明の理である唯一最善の再発防止策である「沖縄の全基地撤去」を断固として要求するものです。
 日本の国土面積のわずか0.6%である沖縄に、在日米軍基地の74%が集中しています。私たちは、名護市辺野古への新基地建設、高江のヘリパッド建設に強く反対するものです。
 かつて戦争の「捨て石」とされ、戦後は米軍の「要石」とされてきた歴史を持つ沖縄。貴重な生物の宝庫である辺野古の海を守り、いのちの生き埋めを許さないたたかいを構築します。
 昨年9月、多くの国民が反対の意を表する中で、安倍政権は安全保障関連法案(戦争法)を強行採決し、日本を海外で戦争に参加する体制を作りはじめました。集団的自衛権の行使容認の閣議決定はもとより、憲法蹂躙の現状・立憲主義の破壊、その無法性が問われ続けています。
 今夏の参議院選挙に向けて、自民党憲法「改正」案がまたにわかに浮上し、九条二項の廃止をはじめとし、数々の基本的人権擁護の条項が削除されていることは見逃せない事実であります。
 私たち宗教者は、いかなる場合においても、自らの信仰・思想・信条の自由が妨げられることなく、一人ひとりが心豊かに生きていくことが保障される社会を願います。“いのち尊し”…国家が個人に優越する社会を構築していく動きには、「否」の発信を続けて歩みます。一刻も早い「戦争法廃止」の実現に向けての取り組みの継続を図ります。
 また、先月の熊本地震で犠牲になった方々に心から哀悼の意を表します。そして、未だ復興の目途がたたず避難生活が続く被災地の皆さんの生活が一刻も早く保障されることを願います。
 しかし、甚大な被害を被った後でも、九州地内で稼働を続ける川内原発の安全性を主張し続ける国と電力会社の無謀性に国民の非難も高まっています。原発の即時停止と原発ゼロ、地震国日本の、原子力に依存しない電力供給施策を備えていくことが求められています。
 「平和の祈りを行動の波へ」のスローガンのもと、私たち宗教者は、いのちを尊び、戦争や核兵器のない平和な社会を希求し、暮らしを守る取り組みに積極的に発信・行動していきます。

2016年5月23日    日本宗教者平和協議会 拡大全国理事会

山家妄想
基地撤去の声を挙げよう

★沖縄県で20才の女性が殺害され、数十キロ離れた山林で半ば白骨化した遺棄死体となって発見された。殺害犯の容疑者は元アメリカ軍海兵隊員で、現在は基地外に住む妻子ある軍属であった。かれは数時間襲う相手を物色し、ウオーキング中の被害者を後ろからこん棒で殴って負傷させ絞殺、遺体を車で運んで雑木林に捨てた。許しがたい計画的で残忍な犯行である。この事件の一月前には米海軍の水兵がビジネスホテルで女性を暴行する事件を起こしたばかりである。
★一九五五年全沖縄に憤激を巻き起こした「由美子ちゃん事件」以来、米兵・米軍属による凶悪犯罪は20件を超えている。また日本全国で米軍関係者が起こす犯罪は毎年200件を越し、半数以上が沖縄である。このような事件が起きるたびに、日本政府はアメリカに「綱紀粛正」と「教育の徹底」など再発防止の申し入れを要請し、米軍も取り組むことを約束するが実効はあがっていない。
★この度も菅官房長官は「こうした事件が二度と起きないよう、政府としても、ありとあらゆる機会を通じて米側に対応を求め続けたい」と述べ、米大統領報道官は「恐ろしい悲劇であり非道な行為だ」と激しく非難、国務省の報道官も「私たちも怒っている」と強調し、国防総省の報道官も「ショックを受け落胆している。ぞっとするような悲劇だ」と指摘したという。その上で、揃って「日本政府と地元当局に全面協力する」決意を語っている。この言葉だけを聞けば、同様な事件が再発することは絶対ないと思える。しかし、過去にこのようなことばが何回も繰り返されながら、悲劇は再発してきたのだ。
★「在日米軍専用施設の約74%が集中する『基地の島』に、20日反発の輪が広がった」と神戸新聞は大きく報じた(16・5・21)。「沖縄から出ていけ」「県民の怒りは頂点に達している」掲載された嘉手納基地前の抗議集会の写真には「CLOSE ALL BASES」「全基地撤去 安保破棄」のプラカードが掲げられている。
★沖縄県庁のある職員は「いくら再発防止を求めても、米軍基地がある限り、悲劇は繰り返される」と悔しがり、県幹部も「名護市辺野古移設ではなく、無条件の返還を政府に堂々と主張していく」と強調したとある。まさに沖縄の声は記事の大見出し「米軍出ていけ」なのである。一方本土でも首相官邸前では「女性の怒りの緊急行動」が行われ、「米軍基地がある限り、繰り返される」日本のどこにも基地はいらないと声を挙げた。安保破棄中央実行委員会、日本平和委員会、日本婦人団体連合会、新日本婦人の会などの団体も談話や声明をだした。沖縄に連帯して、日本各地・各階層から声を挙げることが求められている。
★いま私たちは沖縄に置かれているアメリカ軍の基地、それは本当に「日本の安全を守るためのものなのか」という原点に返ってみることが必要であろう。そこに置かれている「海兵隊」はなぐり込み部隊といわれている。海外に展開し、敵地に上陸し殺戮をこととする。基地で日常的に行われているのは、殺戮の訓練なのである。
★殺伐とした日常、温かい人間性を抑圧する訓練の日常が獣の人格を形作る。そのような「獣人」が人間社会の中を徘徊する危険、それが沖縄の日常である。そしてそれは基地がある限り本土でも出現するのである。それ故に、沖縄のみの問題としてとらえるのではなく、私たち自身の問題として受け止める必要がある。とくに宗教者は生きとし生けるものの「いのち」の尊重を説き、実践することを使命とする。基地に住み殺戮を強いられることは自らの人間性を否定されることである。かれらの苦悩もふくめて、基地に隣接するがゆえに生命の安全を脅かされる者の苦悩をわがものとしてとらえ、その苦悩を除くために声を挙げるべきである。それは「全基地撤去・安保破棄」のこえである。非業の死を遂げた若き女性の無念を晴らすための行動の第一歩は、これ以外にはない。

                 (2016・5・23)  水田全一・妙心寺派の一老僧

宗藤尚三牧師「ノーモア・ヒロシマ」
拝啓オバマ様 from ヒロシマ

 被爆体験の証言や核兵器廃絶、平和を訴えつづけてこられている宗藤尚三牧師(88)は、5月19日付「毎日新聞」(広島版)に「ノーモア・ヒロシマ」と題して、広島を訪問するオバマ米大統領へ手紙を書かれました。
 宗藤牧師は広島工専(現広島大学工学部)1年の時に爆心地から1・3キロで被爆。倒壊した家屋の下敷きになり、大けがを負い似島の救護所に運ばれ、そこで「人間が粗大ゴミのように捨てられる様子は地獄絵さながら」の惨状を目の当たりしました。宗藤牧師は、「アウシュビッツと同様、ヒロシマは世界人類が共有すべき負の遺産。オバマ大統領にも、慰霊の場が人類に語りかけるメッセージを感じてもらいたい」と語っています。
そして、被爆者としてオバマ大統領に期待することとして、「核兵器は使えない単なる戦略と威嚇と考えるのは誤った『安全神話』にすぎません。…自衛の大義のもとに、それが使用されてもふしぎではないし、『想定外』でもありません。私たち人類はそのような『ダモクレスの核の剣のもと』で終末的な危機状態の中で生きているのです。人類を救うためには核兵器の廃絶以外に道はないと思います」と指摘し、犠牲者への追悼の献花が単なるセレモニーにならないためには、「将来に向けた具体的な核廃絶の道程が示されなくてはなりません」と求め、安倍首相には、「平和憲法戦争放棄を謳った9条は、原爆の犠牲者の悲劇を繰り返さないという願いを込めて制定されたもの」であり「その9条を骨抜きにしようとする総理は、あの原爆投下は日本の軍国主義によるアジア戦略や無謀な太平洋戦争への突入という歴史背景が『導火線』となっていることを認識してほしい」と述べ、「被爆者の究極の願いは、謝罪ではなく、戦争の惨禍がくり返されないこと」と語っています。