熊本大地震の犠牲者と被災者の皆さまに
心よりのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
日本宗教者平和協議会

 熊本・大分を中心とした九州の大地震では関連死・行方不明者を合わせると70人近くの犠牲者、建物被害6万件以上、避難者は5月8日日現在でも1万3883人以上となる大災害となりました。活発な余震は依然として収まらず、被災者の方は不安の中での避難生活を強いられています。支援物資届け、医療体制の充実、早期の復興などの生活支援は全く不十分であり、政府は全力で取り組むべきです。
 昨年は宗教者平和会議で大分の皆さまにはお世話になり、湯布院も訪ねました。私たちもそれぞれの立場での支援に立ち上がりましょう。
 また、被災地では国内で唯一稼働中の川内原発は大丈夫なのかが不安の一つと言われています。万が一に備え、速やかな運転停止を求めます。愛媛・伊方原発、佐賀・玄海原発、鹿児島・川内原発は今回の熊本・大分の地震と同じ中央構造線に属し、いつ動きだすか分かりません。地震・火山国の日本に原発の適正立地はありません。すべての原発の廃炉を求めます。
 ましてや災害の混乱に乗じて、火事場泥棒的に憲法の機能停止である「緊急事態条項」の画策をするなどは言語道断であり、断じて許されません。

戦争法廃止・立憲主義を守ろう「5・3憲法集会」開催
「明日を決めるのは私たち」――5万人が参加

 5月3日、安保関連法(戦争法)廃止、立憲主義を守れと全国各地で「憲法集会」が開催されました。
東京・江東区の東京臨海広域防災公園では、「明日を決めるのは私たち」を合言葉に5万人が参加して開催されました。
 開会挨拶で「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」の高田建さんは、「野党と市民がしっかり共闘すれば、与党を追い詰めることができる」と衆院北海道5区補選の結果に言及し、「参院選の1人区で統一を実現し、改憲を企む自公両党と補完勢力による3分の2議席を阻止し、安倍内閣を退陣させよう」と訴えました。学生や立憲デモクラシーの会の山口二郎さん、辺野古基金共同代表の菅原文子さん、ジャーナリスト・むのたけじさん、市民連合の朝倉むつ子早大教授などがスピーチ。「戦争させない1000人委員会」の福山真劫さんが行動を提起し、戦争法廃止を求める署名が1200万人を突破したことを報告、19日に署名提出行動を行い、6月いっぱい署名を継続することを呼びかけました。
 演壇上に4野党の党首が勢ぞろいし、あいさつ。共同の決意をアピールしました。民進党の岡田克也代表は、「憲法違反の法律を廃止に追い込まなければなりません…野党は力を合わせて参院選をたたかい抜く」と決意を述べ、日本共産党の志位和夫委員長は「戦後かつてない新しい市民運動が発展し、それに背中を押されて野党共闘が大きく前進していることは、日本の未来にとって大きな希望」と指摘し、「変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにした政治であり、安倍政権を倒し、憲法の先駆的な輝きを生かした新しい政治をつくろう」と訴えました。社民党の吉田忠智党首は「参院選を、安倍政治を終わらせる足がかりのたたかいにしよう」と訴え、生活の党の小沢一郎代表は「憲法の理念・理想を守ることも、安保法廃止のためにも、4党と市民と協力して何としても選挙戦に勝ち抜こう」と呼びかけました。
 集会後、参加者は都内をアピール行進しました。
 この日、札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、那覇など全国各地で多彩に草の根の行動が取り組まれました。

大阪・京都でも宗教者が「憲法こわすな! 戦争法を廃止へ! 
「5・3おおさか総がかり集会」が大阪市北区の扇町公園で、2万人が参加し、真宗大谷派最勝寺の佐野彰義住職が演壇から発言しました。また、京都では、東山区の円山音楽堂で3000人が参加して開催され、宗教者が参加しました。


戦争法廃止統一署名
日本宗平協に1257筆
 日本宗平協には5月1日までに「戦争法の廃止を求める統一署名」は、全国各地から1257筆が寄せられています。

戦後70年+1
戦後、日本は平和国家として歩んできたのか?
京都で講演とシンポ330人参加
 4月16日(土)内田樹氏をよびシンポジウム「戦後70年+1~戦後、日本は平和国家として歩んできたのか?~」を無事開催させていただくことができました。
 内田樹氏のご講演の後、シンポジウムでは内田樹氏、五十嵐隆明氏、宮城泰年氏、釈徹宗氏にご登壇いただきました。
 不慣れな私たちにたくさんのお力添えをくださった皆様のおかげです。心より感謝しております。
 シンポジュウムには330人を越える方々が来てくださいました。皆様と共に学び、考える時を過ごせましたことを本当に幸せに思っております。
 この企画が動き出したのは昨年の秋のことでした。ちょうど安保関連法案が成立した時期に京都宗平協の青年宗教者が企画を立ち上げました。
 戦争へと進んで行くような世の中の空気に恐怖を感じる中、私たちが何も行動しないのは嫌だと思いました。
 今の時代の動きを自分自身の問題として捉え、私たち宗教者やたくさんの人たちと共に学び、考え、そして気付きを得られるような企画にしたいと考えました。その思いに賛同いただいて4人の先生方のご登壇も決まりました。そして、テーマも自分たちで決めました。
 企画を進めて行く中でいろいろな困難もありました。何かを企画して達成するとはこんなにも大変なことかと気持ちが折れてしまいそうになるとき、宗平協の皆様が今まで行動してこられたことのすごさを感じました。
 そして、その諸先輩方が私たちを大きな慈愛で助けてくださいました。わからないことばかりの私たちに優しく丁寧にご指導くださったり、忙しい合間をぬって私たちが安心して動けるよう人との縁を結んでくださったり、広報活動にひたすら動いてくださったり、皆様のお支えの中、私たち青年は心を強く保って歩ませてもらうことができました。
 そして、青年宗教者の団結力も日増しに強くなっていきました。講演が迫った最後の集まりは作業が深夜まで及びました。青年の誰も帰ろうとせず、「なんだか合宿みたいだね」とみんなで笑い合えたのがとても嬉しく印象的です。
 皆様のお支えのおかげさまでより良い取り組みになったと感じております。本番当日、目にした全ての景色を見たとき、本当に嬉しかったです。ありがたかったです。このようなご縁をいただいたことに幸せと感謝の思いでいっぱいになりました。
 参加者の方からは「とてもよかった」、「また、このような企画をして欲しい」などたくさんの激励をいただきました。
これから振り返りをして次につなげていけるよう反省点も明らかにしていきます。
 最後に私たち青年宗教者が今回の企画に込めた「cocokarahazimaru」という思いがあります。「CO」は英語の接頭語で「共に」、「協力」するなど意味があるそうです。その意味から「個と個が集い、共に考え、気付き、力をあわせて歩みだす」そんなご縁が「ここ」から始まって欲しいと願いました。ご縁を大切に一歩一歩、歩んでまいりたいと思っております。今後ともよろしく致します。

京都宗教者平和協議会青年事務局


内田樹氏の講演とシンポを終えて
京都宗教者平和協議会
立石 明日香
 今回このような機会を得て実行委員会に参加させて頂いたことで沢山の学びがありました。
 戦争の問題、原発の問題、医療の問題、貧困の問題等々、各所に目を見張る問題があります。人間のどういったことがそのようなことを引き起こしてしまうのか、宗教に出会った人間は何を見つめてどう関わって行ったらいいのか、そんなことを考えつついました。 勉強会に参加したりデモに参加したり署名したりはあっても、みんなにもその意識を共有し深めてもらうために企画し働きかけるのは初めての経験です。それは今までと違う立場からいろんな気づきを与えてくれました。
 講演会に沢山の人に足を運んでもらうために各所に宣伝に回りました。知り合いから始まり、その繋がりで賛同し広めてくれる人達にも出会いました、八百屋のおじさんが近所の人にも広めてくれたり励ましの声をくれたり、其々が其々の場所で大切なことを表明している姿に力強さを感じました。SEALDs奥田愛基さんや安保関連法案に反対するママの会の発起人・西郷南海子さんの講演会にも参加させてもらいました。
 今までとは違って、どうしてこの人達は立ち上がり発言し行動しているのだろう?という目線で彼らをみました。そこには「だって、おかしくない?おかしいでしょ??!!」という至ってシンプルな動機を感じました。「表明することって当たり前のことなんだ」「一緒に考えて行こうよ」という大切さを思いました。
 それは内田先生がお話された「常識」が勘違いされたり抜け落ちてきているが本来あるはずの「常識」を持ちたいですね、と言われたことと繋がりました。個別の私利私欲を離れれば全人類、全宇宙、時間を超えて大切にすべき点は見えてくるはずなのではないでしょうか。何か表明したり活動するということには怒りも葛藤もあるはずですが「私利を離れ、きちんと表明して立っている人の姿は清々しい」と感じましたし、人はそういったところから勇気を貰うのだ知りました。
 講演会当日、登壇された先生方の姿を拝見しても感じたことです。沢山の協力で当日をみんなで共有できましたことに深く感謝しています。

京滋キリスト者平和の会
冨田 成美 
 内田氏の講演の内容は多岐にわたりましたが、最も印象に残っているのは、現在日本の在り方に対する見方です。国家の役割は何か?
 それは、自国でしか生きられない人々が、安心してその国で生活できるようにすることだそうです。しかし、現代日本は、グローバル化を「尊重」し、世界で活躍する人材を是としています。 彼らは国民の幸福ではなく自己の利益を求めて世界に「飛躍」し、自国の経済・政治が危うくなれば、簡単に海外に逃げて、国家も同胞をも見捨てます。パナマ文書はその実例です。ここに日本が病む根元があるとのことです。 アベノミクスに対する痛烈な批判でした。また、戦争ができない仕組みである憲法9条にも高い評価を示されました。
 宗教者3氏のお話は、個々人の心の平和を基盤として、社会に平和を得るためには、自然界や他者に対して侵してはならない部分を知り、互いを認め合って共存する精神が大切であると、まとめられるように思います。

核兵器廃絶へ
被爆者国際署名スタート
 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は4月27日、核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を求める、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」をスタートさせました。
 この国際署名は、今年8月で結成60年を迎える日本被団協が提唱し、国内外の被爆者9人が連名で呼びかけたもので、要請項目には「被爆者、すみやなか核兵器廃絶を願い、核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを、すべての国に求めます」とあります。
 東京のJR渋谷駅頭には、「ふたたび被爆者をつくるな」とのタスキをかけた首都圏の被爆者と支援者など約60人が参加し、日本被団協の田中熙巳事務局長は、「私たちと同じような苦しみを誰にも味あわせたくない。世界の政治を動かすために、日本国民だけでなく、数十億の世界の人びとが核兵器をなくすことに賛同してほしい」と訴え、「核兵器のない世界」の一日も早い実現を呼びかけました。
 先に広島で開催された主要7カ国(G7)外相会合の「広島宣言」は、核兵器を禁止し廃絶するための条約の交渉開始に一言もふれず、被爆者から厳しい批判の声があがっています。
 オバマ米大統領のヒロシマ訪問が検討されていると報道されているなかで、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の安井正和事務局長は「オバマ米大統領をはじめ、核保有国とその同盟国のリーダーに、核兵器禁止条約の締結を求めましょう」と訴えました。
 約1時間の取り組みで核保有国のアメリカ、イギリス、フランス、中国など11カ国277人が署名を寄せました。
 この国際署名は、国内外の反核・平和団体はもとより、宗教界などにも連携を呼びかけ、次回の核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれる2020年8月までの条約締結を目指し、世界数億人を目標に取り組まれます。 署名は、毎年の国連総会に提出されます。

山家妄想
教団の危機


★妙心寺派寺院約三千ケ寺のうち、3分の1が専任住職不在となっている事態が報じられてから久しい。必要な対策については、教団執行部や宗議会でも論議がなされているようであるが、根本にある問題を看過していては的外れになる怖れがある。根本的問題とは何か。ひとつは現在の事態を惹起した日本社会の変化であり、いまひとつは仏教と寺院の存在意義についての認識である。
★日本社会のひずみについては教団のみならず、社会の各方面に顕在している過疎と一極集中の問題である。この問題を教団や僧侶はわがこととして検討しているか。いささか古い話ではあるが、池田内閣が所得倍増計画を打ち出し、田中角栄が日本列島改造を唱えて「今太閤」ともてはやされた時に、教団の若い僧が彼を礼讃してはばからなかったことを思い出す。これから入寺する小さな寺が、今太閤によってどのような運命にさらされるのか、彼の未来は黄金に輝いていたのか。少なくとも疑問がささやかれていたことに、若い僧は眼を向けることはなかった。★現在の寺を取り巻く問題の根はここに存在するといえる。この僧を含めて大方の教団員の現実政治や経済に対する関心、日本の社会やその未来に対する宗教家としての洞察を問題にせざるを得ないのである。社会に暮らす一般の人間が抱く考察よりも深い次元でのそれが宗教家には求められていることを自覚すべきではないのか。ところが現実は、一般人のそれより劣っているとしか思えないと指摘されて、これに反論することができる僧がどれだけ存在するだろうか。日本における東京一極集中はますます進んでいる。その対極にある過疎=地方の崩解は、いまや地方自治体解体の危機がささやかれるまでになっている。その中における寺院の存在危機の問題と捉えなければならない。
★いま一つの仏教と寺の存在意義についていえば、根本義におけるそれと現実に対処する面でのそれに分けて論じられるべきであろう。以前、九州の過疎地の寺院が解散したとき、宗議会では解散を決断実行した住職について「処分」すべきとの意見が出た事実がある。教職員として勤めることによって寺を維持してきたことに対して、教団として何の援助も与えることなく、苦渋の決断の結果の行動に対して「処分」を口にする。
★一方教団執行部を含めて、無住寺院の解散・寺籍抹消に精力的に取り組むと言い出す。勿論、無住寺院の存在が犯罪や不正な行為に利用される危険があることは承知しているが、仏教と寺の存在意義に対する真剣な検討を経ての結論とは言えないだろう。現に存在する寺がどのような縁によって建立され、維持されてきたのか。華やかに脚光を浴びる由緒寺院だけでなく、地方の小さな寺と雖も建立の縁と由緒は存在する。この地に寺を求めた人々の願いと、それに応えた僧侶の志は存在し受け継がれなければならない。
★どのようにそれにこたえるか、私たち僧や教団が根底に持つ必要があるのはこのことである。幸いにわが寺が直面している問題はないと受け止めれば、余所事であり教団の問題でもない。しかしながら事態の進展は、この傍観を許さないであろう。必要なのは実態を直視したうえで発揮される洞察力なのである。
★わが寺の実態を紹介すると、檀徒数は60と本山に届けている。昨今、わが檀信徒の家庭にも矛盾は顕著に表れてきている。一端を紹介すれば、いわゆるホームに入居している人は7人を数える。高齢者独居世帯は14である。老人二人世帯が13。将来、この地での家の継承に不安を抱えているのが36世帯、不安なしが28という数字である。つまり64世帯のうち56%が、将来檀徒から消える可能性がある。
★子どもの数は圧倒的に少ない。しかも幼児期は別として高学年になると家を出て、そのまま大都市圏で就職し結婚して家庭を親と別にする。また親と同居しているものは、男女ともに配偶者を見つけることのできないまま、年を重ねる者が多い。かつて結婚しても親と同居し、互いに愚痴りあいながらも死別したあとは「姑のやってきたのと同じことをやっている」といわれた姿は、今は見られない。
★旧来の日本の「家」のあり方が崩壊に瀕しているのが実態である。教団の危機といわれているものは、実は「日本の危機」なのだという認識で対処することが求められている。
(2016・4・19)  水田全一・妙心寺派の一老僧